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英国政府が再処理廃棄物の等価交換に関する方針を決定-高レベル放射性廃棄物と中レベル放射性廃棄物の等価交換を承認

2004年12月13日の英国貿易産業省(DTI)のプレスリリースによると、英国政府は、海外から受け入れた使用済燃料の再処理によって発生する中レベル放射性廃棄物について、高レベル放射性廃棄物と等価交換することを承認する決定を行った。DTIは、2004年1月30日に「中レベル放射性廃棄物の等価交換のための提案についての協議文書」を発表し、2004年4月30日までの3カ月間、公開協議を行っていた。今回の決定は、協議文書に対して寄せられた325の意見のうち90%が等価交換に賛同したことを受けたものであるとされている。

公開協議の結果を要約した文書によると、この協議文書は約1,600部配布されており、配布先は議員・原子力産業界・労働組合・環境団体・英国民・地方政府・外国政府・日本の電気事業者および日本国民・その他の広範囲に及んでいた。325の返答のうち302が肯定的な意見、13が否定的な意見、10がその他の意見であった。

プレスリリースによると、今回の決定により、環境と経済の両面において便益が得られるとしており、特に以下のような便益があげられている。

  • 海外から受け入れた使用済燃料の再処理によって発生する放射性廃棄物を早期に返還できる。(高レベル放射性廃棄物との等価交換の場合は2017年に終了。等価交換しない場合は2033年に終了。)
  • 英国核燃料公社(BNFL)による海外顧客への放射性廃棄物の輸送回数が6分の1に減少する。
  • 原子力廃止措置機関(NDA)によるその他の商業再処理事業の収益とともに、中レベル放射性廃棄物の等価交換によってNDAにもたらされる追加収益が、NDAによるクリーンアップ事業に当てられることになり、結果的に長期にわたって納税者の利益となる。

英国政府は1990年代始めに、この等価交換問題を詳細に検討しており、これまでの政府方針は1995年に発表されたコマンドペーパー「放射性廃棄物管理政策レビュー」(Cm2919)において、海外の使用済燃料の再処理により発生した放射性廃棄物は、再処理の委託国に返還すべきとされていた。今回の決定により、同コマンドペーパーで示されていた方針が変更され、現行のBNFLの契約の下、海外から受け入れた使用済燃料の再処理によって発生する中レベル放射性廃棄物の保有と長期管理を行うことになるとされている。

プレスリリースによると、等価交換による中レベル放射性廃棄物の増量分は、英国全体での発生量の約1.4%に当たるとされている。しかし、放射線学上で等価の高レベル放射性廃棄物がBNFLの海外顧客に返還されることになり、放射線学上の観点からは英国において中立が保たれることになるとのことである。なお、前述のコマンドペーパーにおいて、政府は、既にドリッグに低レベル放射性廃棄物処分場が存在することから、低レベル放射性廃棄物を高レベル放射性廃棄物と等価交換することは認めている。

【出典】

  • 貿易産業省(DTI)ウェブサイトの2004年12月13日付けのニュースリリース、
    http://www.gnn.gov.uk/environment/detail.asp?ReleaseID=139081&NewsAreaID=2&NavigatedFromDepartment=False
  • 貿易産業省(DTI)ウェブサイト、http://www.dti.gov.uk/consultations/consultation-1205.html、2004年12月
  • コマンドペーパー「放射性廃棄物管理政策レビュー 最終結論」(Cm2919)、1995年7月
  • 環境・食糧・農村地域省(DEFRA)、協議文書「放射性廃棄物の安全な管理」、2001年9月

【2006年10月2日追記】

2006年9月27日、原子力廃止措置機関(NDA)は、ブリティッシュ・ニュークリア・グループ(BNG)社が実施した等価交換による返還高レベル放射性廃棄物量の算出に対して、コンサルタント会社の協力の下に独立した評価及び監査を行った結果、BNG社の報告結果は妥当であり、NDAが等価交換の実施方法について承認する旨を発表した。

等価交換に関しては、2004年に政府が中レベル及び低レベル放射性廃棄物と放射線学的に等価な高レベル放射性廃棄物量の算出のために、「廃棄体の交換比率の算定に用いる指標」(ITP:Integrated Toxic Potential)を用いることを発表しており、政府はNDAにITPによる計算の妥当性を確認するように求めていた。

なお、プレスリリースでは、今回NDAがコンサルタント会社に作成させた評価・監査報告書も公表されており、その中で、BNG社によって算出された等価交換による高レベル放射性廃棄物の追加量の割合について、最終的な結果などが示されている。

  • 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイトの2006年9月27日付けのプレスリリース
    http://www.nda.gov.uk/News–News_1944).aspx?pg=1944

(post by 原環センター , last modified: 2013-07-03 )