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《ドイツ》BfSがアッセⅡ研究鉱山の閉鎖オプションとして 廃棄物の回収を選択

ドイツの連邦放射線防護庁(BfS)は、2010年1月15日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物の処分場、地下研究所であったアッセⅡ研究鉱山の閉鎖に関して、廃棄物の回収、同鉱山のより深い地層への処分、特殊なコンクリートによる埋め戻しという3つのオプションのうち、廃棄物の回収が最良な方法であるとする評価結果を公表した。これらの3つのオプションは、地下水の浸入によって処分坑道の安定性が確保できない可能性が見出されたことから、処分場としての閉鎖方策を早急に決定するために検討されたものであり、2009年9月3日にBfSによって公表され、その後、最良な方法を選定するための比較評価の作業が行われていた 。 今回行われた評価に当たっては、各オプションについて特に次の点に留意されている。

  • アッセⅡ研究鉱山の坑道の状態が不安定なため、いずれのオプションを講じるにしても時間的な猶予はほとんどないこと。
  • 既に定置されている放射性廃棄物のインベントリと収納容器の状態についての情報が不足していること。
  • 地下水(塩水)が浸入しているアッセⅡ研究鉱山の状態の推移を予測することは困難であり、原子力法で求められている処分場としての長期安全性の立証は困難であること。

これらの留意点を踏まえて評価が行われた結果、廃棄物が定置されている坑道の特殊なコンクリートによる埋め戻しについては、長期安全性が立証できるか否かは現状では判定できないとされた。また、アッセⅡ研究鉱山のより深い地層への処分については、適切な処分エリアが見つからない場合のリスクがあるだけでなく、他のオプションよりも実施に最も時間を要するものであると評価された。 以上のように、いずれのオプションも不確実性を有しており、最良の方法と言えるものはないとした上で、浸水量が今後増加し、鉱山に定置している廃棄物の状態が現状よりも悪化し、回収などの緊急対応が困難になる事態が発生する可能性が否定できないことから、安全性の確保を第一とし、廃棄物の回収を優先するオプションが最良な方法であるという評価に至ったとしている。 最良のオプションとして選定とされた廃棄物の回収については、今後、以下の計画などを検討していくとしている。

  • 実施可能な回収計画の立案
  • 処分坑道のデータを収集し、回収に係る不確実性を体系的に評価するための包括的方法を策定
  • 坑道の安定化に必要な技術的措置の実施
  • 浸水の影響を抑える緊急措置の実施

これらに加えて、BfSは、廃棄物の回収に伴う不確実性の低減を図るため、廃棄物が定置された坑道へのアクセスを確保しつつ、廃棄物収納容器の状況を調査するための方針を提示するとしている。 なお、BfSは、同庁のアッセⅡ研究鉱山に関するウェブサイトにおいて、今回のオプションの比較評価結果に関する情報を掲載した他、2010年1月18日に、アッセⅡ研究鉱山が位置するヴォルフェンブュテルにおいて、閉鎖オプションに関する説明会を開催している。

【出典】

【2010年4月30日追記】

連邦放射線防護庁(BfS)は、2010年4月27日付のプレスリリースにおいて、同日、アッセⅡ研究鉱山の廃止措置に係る緊急時対応計画に関する説明会を地元レムリンゲン村のコミュニティセンターで開催したことを公表した。説明会では、地下水の浸入によって、低中レベル放射性廃棄物が定置されている処分坑道の安定性が確保できない可能性があることを説明するとともに、実施体制、地下水が侵入するリスクを低減する措置、処分坑道の安定化に係る措置、廃棄物回収措置、及び監視から成る緊急時対応計画の説明が行われた。なお、BfSは、2010年2月末に、緊急時対応計画を策定したとしている。

【追記部出典】

  • 連邦放射線防護庁(BfS)アッセⅡ研究鉱山のウェブサイト、2010年4月27日付プレスリリース、 http://www.endlager-asse.de/cln_137/SharedDocs/Termine/DE/2010/0427_info_notfallplanung.html、 http://www.endlager-asse.de/cln_137/SharedDocs/Termine/EN/2010/0427_emergency_planning.html
  • 連邦放射線防護庁(BfS)アッセⅡ研究鉱山のウェブサイト、 アッセⅡ研究鉱山の廃止措置に係る緊急時対応計画 http://www.endlager-asse.de/cln_137/EN/3_WhatHappens/C_SafetyAnd_RadiationProtection/emergency_preparedness.html

【2010年5月7日追記】

連邦放射線防護庁(BfS)は、2010年5月5日付のプレスリリースにおいて、アッセⅡ研究鉱山での低中レベル放射性廃棄物の回収計画の立案に先立ち、回収に伴う不確実性を評価するために年内にも処分坑道の1つを試験的に掘削し、調査する意向であることを明らかにした。プレスリリースによれば、1970年代に低中レベル放射性廃棄物が試験的に処分された地下750mの処分坑道(第7処分室)まで掘削し、30年間にわたって廃棄物が閉じ込められてきた処分室の状態(処分室内部の空気の汚染状況、処分室及び廃棄物収納容器の状態、処分室内での地下水浸出の有無)を調査することにより、以下の事項を明らかにしたいとしている。

  • 回収作業により、作業員に対してどの程度の被ばくの発生が想定されるか
  • アッセⅡ研究鉱山内に定置されている約126,000体の廃棄物の回収には、どの程度の時間を要するか
  • 遠隔操作技術によって、どの程度の廃棄物を回収することができるか

BfSは、処分坑道内部の現状に関する最初の調査結果を2010年末までに取りまとめるとしている。なお、今回の確認作業の実施に当たっては、鉱山法に基づく特別操業計画に対するニーダーザクセン州鉱山当局の許認可に加えて、原子力法に基づく許認可を取得する必要があるとしている。

【追記部出典】

  • 連邦放射線防護庁(BfS)、アッセⅡ研究鉱山のウェブサイト、2010年5月5日付プレスリリース、 http://www.endlager-asse.de/cln_095/SharedDocs/Kurzmeldungen/DE/2010/0505_probephase_gestartet.html

【2010年6月2日追記】

連邦放射線防護庁(BfS)は、2010年6月1日付のプレスリリースにおいて、アッセⅡ研究鉱山での低中レベル放射性廃棄物の回収について、回収計画の策定に先立って実施を計画している処分坑道の試験的な掘削及び調査に関して、今後の作業スケジュールを明らかにした。プレスリリースによれば、BfSは、2010年5月に処分坑道の掘削及び調査の計画を示した文書を公表しており、以下の3段階の工程により掘削及び調査を進めることとしている。

  • 第1段階:処分坑道の一部の試験的な掘削及び調査
  • 第2段階:処分室の掘削
  • 第3段階:放射性廃棄物の試験的な回収

また、BfSは、2010年中に開始するとしていた第1段階の処分坑道の一部の試験的な掘削・調査について(2010年5月7日付追記参照)、2010 年11月初旬に処分坑道の掘削を行い、2010年11月末に調査を開始する予定であり、2010年末には最初の調査結果が得られるとしている。

【追記部出典】

  • 連邦放射線防護庁(BfS)、アッセⅡ研究鉱山のウェブサイト、2010年6月1日付プレスリリース、http://www.endlager-asse.de/cln_137/SharedDocs/Kurzmeldungen/DE/2010/0601_kammer7_november.html
  • 連邦放射線防護庁(BfS)、「アッセⅡ研究鉱山の処分坑道の試験的な掘削に関する確認調査-第1段階 第7処分室(750m)及び第12処分室(750m)の試験的な掘削の計画案」http://www.endlager-asse.de/cae/servlet/contentblob/1004886/publicationFile/64027/faktenerhebung_anbohren.pdf;jsessionid=BAF005045235497A44B4FAE7129491C0

【2010年8月17日追記】

ドイツ連邦議会は、2010年8月13日付のプレスリリースにおいて、原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物処分の費用に関する連邦議会資料を公表し、この中でアッセⅡ研究鉱山の閉鎖措置の費用見積を明らかにした。連邦議会資料によれば、アッセⅡ研究鉱山の閉鎖措置については、2009年までに3億8,600万ユーロが支出されたこと、及び2010年から2035年までに20億8,500万ユーロの費用が発生する見込みであるとしている。なお、2010年以降に発生する閉鎖費用については、モルスレーベン処分場の廃止措置 費用から推定したものとしているが、アッセⅡ研究鉱山の閉鎖オプションを検討する際に、放射性廃棄物の回収オプションの費用として見積られた37億ユーロという試算もあるとしている。

【追記部出典】

【2010年11月5日追記】

ニーダーザクセン州環境省は、自身のウェブサイトにおいて、アッセⅡ研究鉱山の処分坑道の一部の試験的な掘削及び調査(2010年6月2日付追記参照)の実施のため、2010年10月27日に連邦放射線防護庁(BfS)が、原子力法に基づく許認可申請を同省に提出したことを公表した。ただし、同省は、現時点では環境影響評価書、掘削技術の系統仕様書、並びに安全性及び事故の分析に関する書類などが未提出のため、BfSに対してこれらの申請書類を近日中に提出するよう求めている。 なお、試験的な掘削及び調査の実施に当たっては、原子力法に基づく許認可に加えて、鉱山法に基づく特別操業計画に対するニーダーザクセン州鉱山当局の許認可を取得する必要があるとされている(2010年5月7日付追記参照)が、今回の情報では、鉱山法に基づく許認可手続の状況については言及されていない。

【追記部出典】

【2011年2月7日追記】

ニーダーザクセン州環境省は、自身のウェブサイトにおいて、2011年2月1日時点でのアッセⅡ研究鉱山の処分坑道の一部の試験的な掘削及び調査(2010年6月2日付追記参照)の実施に係る許認可手続の状況を公表した。ニーダーザクセン州環境省及び同州鉱山当局は、原子力法に基づく許認可(州環境省が所管)及び鉱山法に基づく操業計画の許認可(州鉱山当局が所管)をそれぞれ2011年第1四半期末までに発給するとの意向を示している。

同ウェブサイトによれば、BfSは、処分坑道のうちの第7処分室及び第12処分室の試験的な掘削及び調査のため、2010年10月27日に原子力法に基づく許認可申請書類を提出した後(2010年11月5日付追記参照)、2010年11月9日、19日及び26日に追加の申請書類を提出した。その後、BfSは、2011年1月に州環境省から許認可申請書類に関する25の未解決項目を明らかにするよう求められたことを受けて、同月、17の申請書類の改訂版と新たに作成した1つの書類を州環境省に提出した。ただし、州環境省は、その他に未提出の重要な申請書類の改訂が残されているとしている。

また、鉱山法に基づく操業計画の許認可手続こちらについては、2011年2月1日時点での情報として、BfSによる許認可申請及び審査の状況が以下のように示されている。

 アッセⅡ研究鉱山での試験的な掘削・調査に係る、
鉱山法に基づく操業計画の許認可手続の状況(2011年2月1日時点)
操業計画 申請受理日 審査状況
主操業計画:試験的な掘削・調査(第1段階)措置のための目標の拡大に関する主操業計画2009/2011の補遺1 2010年12月8日 審査中
特別操業計画08/2010:第7処分室(750m)エリアの掘削(確認調査) 2010年12月13日 審査中
特別操業計画09/2010:ラドンモニタリング坑IIの掘削(第12処分室の調査を行うために必要となる条件) 2010年12月23日 審査中
特別操業計画01/2011:深度750mの東部方向北側坑道東部エリアの修復(第12処分室の調査を行うために必要となる条件) 2011年1月5日 審査中

【出典】

(post by j-nakamura , last modified: 2023-10-11 )