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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の操業が再開

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2017年1月17日のニュースリリースにおいて、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の操業再開の式典が、エネルギー長官、ニューメキシコ州知事等が列席して2017年1月9日に開催されたことを公表した。WIPPは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されていたが、2016年12月23日に操業再開が決定され、操業再開後の初めてのTRU廃棄物の定置が2017年1月4日に行われていた

エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)の2017年1月17日のニュースリリースでは、WIPPの操業再開について、WIPPを監督するDOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)から、以下のような情報が示されている。

  • 操業再開に際しては、DOEの事故調査委員会(AIB)の指摘、ニューメキシコ州環境省(NMED)や国防核施設安全委員会(DNFSB)、環境保護庁(EPA)、労働省鉱山安全保健管理局等の詳細な監督を受けて、多くの改善が行われた。
  • 火災事故の影響による電力供給の回復、安全管理プログラムの改善、施設・装備等の強化、岩盤管理(ground control)、除染など、復旧活動は複雑であり、35カ月という長期を要した。
  • 作業環境が放射能で汚染された環境へ変化するとともに、天井や壁のロックボルト打設などの岩盤管理作業が特に困難な課題となった。
  • 放射能汚染区域は処分施設南側区域の早期閉鎖で約6割が減少したほか、岩塩による放射性核種の吸収等で表面汚染は減少を続けているが、第7パネルが閉鎖されるまで放射能汚染区域は残る見込みである。
  • 廃棄物受入れは徐々に頻度を上げて、2017年後半には週5回程度の受入れを見込んでいるが、以前と同じペースでの廃棄物受入れには、2021年以降に完成予定の新たな排気立坑等による換気能力の強化が必要である。
  • TRU廃棄物の各DOEサイトからの輸送は、2017年春頃の再開を見込んでおり、詳細な予定を策定中である。
  • 放射能汚染された地下施設での復旧作業では、防護服等の着用により、最大75%も作業効率が低下したが、作業員の努力により復旧を達成できた。

【出典】

 

【2017年4月12日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2017年4月10日のニュースリリースにおいて、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、2017年1月4日に操業を再開してから初めてとなるTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)のWIPP復旧情報のウェブサイトにおいても、同様な内容を伝えるWIPP更新情報が掲載され、廃棄物受入れの様子を伝えるビデオも公表されている。

今回受入れが行われたTRU廃棄物は、アイダホ国立研究所(INL)から搬入されたものであり、DOEは、2014年2月の火災事故及び放射線事象でWIPPの操業が停止されてからTRU廃棄物の貯蔵を余儀なくされていた各DOEサイトにとっても、WIPP自身にとっても、重要なマイルストーンであるとしている。WIPPにおけるTRU廃棄物の受入れは、当初は週2回のペースで行われ、2017年末までには週4回のペースに増加する予定とされている。

なお、DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、今回のTRU廃棄物輸送の再開に向けて、各DOEサイトからWIPPまでの輸送経路及びWIPP近傍において、実際の廃棄物輸送容器の展示や説明を行う「ロードショー」を実施していた。

【出典】

 

【2020年1月23日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2020年1月14日付けのニュース記事において、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、操業停止後の6年間で初めて大型輸送容器であるTRUPACT-IIIの受入れを行ったことを公表した。今回受入れたTRU廃棄物は、DOEのサバンナリバーサイト(SRS)から搬出されたものであり、TRUPACT-III輸送容器を使用することにより、DOE環境管理局(EM)が管轄する廃棄物発生サイトにおいては、大型のTRU廃棄物を切断等せずにそのまま梱包・輸送できるようになり、各DOEサイトでのクリーンナップ活動が加速化されるとしている。

大型のTRU廃棄物には、汚染されたグローブボックス、モーター、大型分析機器などが含まれている。TRUPACT-III輸送容器は、幅8.2フィート(約2.5メートル)、高さ8.7フィート(約2.7メートル)、長さが14フィート(約4.3メートル)の直方体で、廃棄物を含めた最大重量は55,116ポンド(約25トン)となり、専用に設計されたトレーラーで運搬される。TRUPACT-III輸送容器での輸送時には、処分される廃棄物は専用の標準大型容器(SLB2:Standard Large Box 2)に封入され、WIPPの処分室でSLB2が廃棄体としてそのまま定置される。

TRUPACT-III輸送容器は標準大型容器(SLB2)を輸送するために設計されている

TRUPACT-III輸送容器から取り出された標準大型容器(SLB2)

標準大型容器(SLB2)は廃棄体としてWIPPの処分室に定置される

 

TRUPACT-III輸送容器によるTRU廃棄物の輸送は、WIPPが操業を開始してから12年後となる2011年に開始されたが、2014年2月の火災事故及び放射線事象でWIPPの操業が停止されたことにより中断していた。今回のTRUPACT-III輸送容器による輸送の再開に当たっては、搬出元のサバンナリバーサイト(SRS)とWIPPの双方において、チームの再訓練、再認証が行われたほか、6年前に使用されていた機器の点検、修理などが行われた。

なお、WIPPへのTRU廃棄物の輸送物は、衛星を利用したDOEの輸送追跡・通信システムを使用して、リアルタイムでの追跡などが行われている。

【出典】

 

【2020年8月4日追記】

米国のエネルギー省(DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2020730日付けのニュース記事で、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)において、サンディア国立研究所(SNL)からのTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。今回受け入れたTRU廃棄物は、「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)であり、遮蔽容器アセンブリ(Shielded Container Assembly, SCA)と呼ばれる容器に梱包されて輸送された。SNLからのTRU廃棄物の受入れは過去10回にわたって行われたが、今回の廃棄物受入れは2012年以来となる。

HalfPACT輸送容器による輸送

今回のTRU廃棄物の輸送に使用された遮蔽容器アセンブリ(SCA)は、鉛遮蔽ライナー付きドラム容器であり、比較的線量の低いRH廃棄物について、「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)を輸送容器に収納した場合と同様に輸送基準が満足できるような遮蔽能力を有している。SCAは、空の状態で約1,700ポンド(約770kg)あり、80,000ポンド(約36トン)という運輸省(DOT)の重量制限に適合するよう、HalfPACT輸送容器で輸送された。なお、今回のSNLから輸送されたTRU廃棄物は、CH廃棄物と同様の方式で輸送・処分されるが、処分実績上の区分はRH廃棄物として扱われる。

 

遮蔽容器アセンブリ(SCA)の構造

遮蔽容器アセンブリ(SCA)は3本パックで輸送され、廃棄体として処分される

WIPP処分室における遮蔽容器アセンブリ(SCA)廃棄体の定置イメージ

なお、WIPPでは、RH廃棄物はRH-72Bと呼ばれる輸送容器(キャスク)で輸送され、処分室の壁面に掘削された水平処分孔に定置する形で処分が行われてきた。しかし、2014年2月の放射線事象の後は、水平処分孔掘削による処分室内汚染への懸念から、RH-72BキャスクによるRH廃棄物の輸送は中止されていた。2025年と想定されている新換気システム及び新たな立坑の完成までは、RH廃棄物用の水平処分孔の掘削を行う計画はないものとされ、DOEは新しいタイプの遮蔽容器を開発している。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-10 )