Top » 海外情報ニュースフラッシュ » (個別記事表示)

§ 2015年8月10日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

英国政府が地層処分事業に関する持続可能性評価と生息環境規制評価の実施内容案を公表

タグ:

英国政府のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2015年8月4日に、地層処分事業を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト(NSIP)」と位置付ける上で必要となる持続可能性評価(AoS,Appraisal of Sustainability)と生息環境規制評価(HRA,Habitats Regulations Assessment)の実施内容案を示した技術的な協議文書を公表した1

英国では、2008年計画法(2015年3月改訂)により、イングランドに設置する場合の高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設(GDF)に加えて、候補サイトを評価するために実施する地上からのボーリング調査も「国家的に重要な社会基盤プロジェクト(NSIP)」の一つと位置づけられており、その実施には計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令が必要となっている2 。英国政府は、地層処分施設に関する開発同意令の発給審査の基礎となる国家政策声明書(NPS)3 のドラフト版の策定を進めており、この国家政策声明書には、2008年計画法に従った、持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の評価結果を含むことになっている。

また、英国政府は、今回公表した協議文書についての意見等を2015年9月25日まで受け付けるとしており、今後、寄せられた意見等を踏まえて、持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の実施内容を確定し、評価を実施することとなる。英国政府は、国家政策声明書のドラフト版及びそれぞれの評価結果をまとめた報告書について、2016年に公開協議を行うとしている。

■持続可能性評価(AoS)の目的と協議文書で示された内容

国家政策声明書(NPS)の前提となる持続可能性評価(AoS)では、一般的なサイトを対象とした地層処分に関する国家政策声明書のドラフト版に対して、環境に影響を与える計画及びプログラムの環境アセスメントに関する欧州連合(EU)の「戦略的環境アセスメント(SEA4 )指令」(2001/42/EC)で求められている環境アセスメント、及び環境アセスメントと同様の手法による社会・経済的影響評価が行われる。なお、EUのSEA指令は、計画及びプログラムに対する影響評価だけでなく、計画及びプログラムの目的や地理的範囲を考慮した合理的な代替案に対する影響評価も実施することを定めている。

国家政策声明書のドラフト版に対する持続可能性評価の目的は以下の通りである。

  • 持続可能な開発に貢献し、気候変動の緩和と適応、景観への配慮がされていることを保証すること
  • 環境及び社会・経済的影響を特定して定量化すること
  • 好ましい影響を増強し、好ましくない影響を回避・抑制・管理するための適切な措置を特定すること
  • 法定諮問機関、ステークホルダー、より広範な公衆、事業者、事業者のコミュニティ、利害に関係する環境及び社会・経済的影響について認識させ、見解を出させること。また、国家政策声明書のドラフト版への見解提出や改善提案を促すこと

国家政策声明書(NPS)のドラフト版についての持続可能性評価(AoS)に当たっては、NPSの全般的な目的、地層処分事業の開発原則、一般的な影響とサイト選定で考慮されるべき点、一般的な緩和措置を特に考慮して、持続可能性への影響が評価される。また、EUのSEA指令に沿って、AoSではNPSドラフト版に対する影響評価だけでなく、NPSドラフト版の代替案に対する影響評価も実施される。英国政府によるSEA指令についてのガイダンスでは、計画及びプログラムの実施の必要性、実施方法、実施地域、実施時期、実施内容の詳細についての代替案を作成すべきとしている。

英国政府は、国家政策声明書(NPS)の代替案として、①特別な環境影響が懸念される地域を除外するなどの除外基準を設けたNPS、②地層処分施設の複数の立地候補サイトを示したNPS、③NPSを定めず地層処分事業を実施しない場合の3案を挙げている。また、地層処分を高レベル放射性廃棄物等の管理方針として決定しているため、持続可能性評価(AoS)において地層処分の代替案を設定しないとしている。

■生息環境規制評価(HRA)の目的と協議文書で示された内容

国家政策声明書(NPS)の前提となる生息環境規制評価(HRA)では、一般的なサイトを対象とした地層処分に関するNPSのドラフト版に対して、EUの生息環境指令(1992/43/EEC)で求められている土地利用計画による欧州のある地域への影響評価が行われる。

国家政策声明書(NPS)のドラフト版についての生息環境規制評価(HRA)に当たっては、NPSの全般的な目的、地層処分事業の開発原則、一般的な影響とサイト選定で考慮すべき点、一般的な緩和措置を特に考慮して、影響評価が実施することとなっている。

生息環境規制評価(HRA)を実施する英国政府は、国家政策声明書(NPS)は特定のサイトを対象としていないため、HRAではイングランドの特定の地域を対象として、その地域への影響について評価することは適切ではなく、欧州のある地域を全般的に保護するために必要な措置を特定するための評価を行うことが、より適切であるとしている。なお、英国政府は持続可能性評価(AoS)で取り扱う3つの代替案を対象としたHRAを実施するとしている。

【出典】


  1. 持続可能性評価(AoS)及び生息環境規制評価(HRA)は、国家政策声明書(NPS)が策定される前に、国レベルで見込まれる環境及び社会・経済効果を特定し、考慮に入れられるようにするために実施される。 []
  2. 英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、イングランド以外で地層処分施設を計画する場合は各地方自治政府が定める許可制度が適用される。 []
  3. このNPSは、特定のサイトではなく一般的なサイトを対象とした地層処分施設等について作成される。 []
  4. 戦略的環境アセスメント(SEA)は、事業の計画決定過程、立地選定段階などで実施される環境アセスメントを指す。 []

(post by f-yamada , last modified: 2015-10-28 )