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《英国》放射性廃棄物管理会社(RWM)が地層処分対象の放射性廃棄物インベントリ報告書を公表

英国の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社の放射性廃棄物管理会社(Radioactive Waste Management Limited, RWM)は、地層処分対象となる放射性廃棄物を抽出した報告書「地層処分:2013年版抽出インベントリ」(以下「インベントリ報告書」という)を2015年7月22日に公表した。RWMは、これまでもインベントリ報告書を定期的に作成しており、2007年版と2010年版を作成している。RWMは2007年版のインベントリ報告書をもとに、一般的な条件における処分システム・セーフティケース1 (gDSSC)を作成したが、今回RWMが公表した2013年版のインベントリ報告書は、2016年末に予定されているgDSSCの更新版の作成において活用するとしている。

英国政府は2014年に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設の設置に向けた新たなサイト選定プロセス等を示した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』 において、処分場立地の可能性を検討する自治体を含む地域に対して、地層処分対象の放射性廃棄物インベントリの全体像を予め提示することを方針としている。これは、地層処分対象の放射性廃棄物地層処分の受け入れを検討している地域に対して、地層処分場に処分される廃棄物を明確に把握してもらうためとしている。

今回RMWが公表したインベントリ報告書では、地層処分対象の放射性廃棄物として、高レベル放射性廃棄物(HLW)、中レベル放射性廃棄物(ILW)、浅地中処分できない一部の低レベル放射性廃棄物(LLW)のほか、再処理の対象とならない使用済燃料(SF)、再処理によって分離・回収した余剰のプルトニウム(Pu)及びウラン(U)を含めている(表1参照)。なお、英国では、安全基準を満足するセーフティケースが実現することを前提として、費用の削減の観点から、地層処分施設は1カ所を想定している。

 

表1 地層処分対象の放射性廃棄物インベントリ

廃棄物分類 廃棄物量(m3
(貯蔵時)
廃棄物量(m3
(処分容器収納時)
高レベル放射性廃棄物(HLW) 1,410 9,290
中レベル放射性廃棄物(ILW) 267,000 456,000
低レベル放射性廃棄物(LLW) 9,330 11,800
プルトニウム(Pu) 0.567 620
使用済燃料(SF) 9,850 66,100
ウラン(U) 26,300 112,000
合計 314,000 656,000

※表1には、地層処分を実施しない方針のスコットランドが保有する、高レベル放射性廃棄物等のインベントリは含まれない。

RWMは、地層処分対象の放射性廃棄物インベントリを抽出する上での将来の原子力発電の導入と再処理計画に関する想定として、英国で初期に導入されたガス冷却炉(GCR,マグノックス炉)の使用済燃料約55,000トン(ウラン換算、以下同じ)は2017年まで再処理してガラス固化体として地層処分するとしている。既存の原子炉から発生する使用済燃料のうち、改良型ガス冷却炉(AGR)の使用済燃料の一部と加圧水型原子炉(PWR、1基)の使用済燃料のほか、今後新設が計画されている原子炉計12基分から発生する使用済燃料約22,050トンは高レベル放射性廃棄物に含めておらず、再処理せずに使用済燃料として処分すると想定してインベントリを計上している。なお、RWMは、地層処分対象の放射性廃棄物インベントリは、2013年版の放射性廃棄物インベントリ報告書 で示された英国全体での全放射性廃棄物インベントリの約6%程度であるとしている。

 

【出典】

  1. 英国で見つけられるような地質環境を想定し、サイトを特定しないで一般的な条件で作成した処分システム・セーフティケースであり、英語では generic Disposal System Safety Case と呼ばれている。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )