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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で放射線事象に対応した一部の廃棄物容器の隔離計画を検討

米国ニューメキシコ州で廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)を操業するエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)及び管理・操業(M&O)契約者は、2014年5月30日に、WIPPの地下処分施設における一部の廃棄物容器の隔離計画案をニューメキシコ州環境省(NMED)に提出した。WIPPでは、2014年2月14日に発生した放射線事象の原因究明の調査において、第7パネル第7処分室で廃棄物容器1本の蓋部の損傷が確認されており、NMEDは、2014年5月20日に、同様の廃棄物が処分されている第6パネル及び第7パネル第7処分室について、廃棄物容器の隔離計画を提出するように行政命令を発出していた。

WIPPの放射線事象については、原因究明のための調査が進行中であり、2014年4月2日からは地下処分施設への入坑による調査が数次にわたって行われている。2014年5月15日に行われた地下処分施設での調査では、第7パネル第7処分室に定置された廃棄物容器1本の蓋部の開口、発熱反応による変色が確認された。

蓋部の開口及び熱変色が確認された廃棄物容器(2014年5月15日撮影)

蓋部の開口及び熱変色が確認された廃棄物容器(2014年5月15日撮影)

蓋の開口部のクローズアップ(2014年5月22日撮影)"

蓋の開口部のクローズアップ(2014年5月22日撮影)

損傷が確認された廃棄物容器は、ロスアラモス国立研究所(LANL)から搬入されたものであり、硝酸塩とともに、硝酸塩との反応性が高い有機系物質が封入されていたことが確認されている。ロスアラモス国立研究所では、処分のために液体廃棄物を浸み込ませる吸収材が有機系の製品(猫砂(kitty litter)が使用されている模様)に変更されていたことが判明しており、今回の事象発生の原因として有力視されている。2014年5月30日に行われた地下処分施設の調査では、損傷した廃棄物容器の周辺からサンプルが採取されたが、2014年6月3日時点では分析結果は公表されておらず、最終的な原因特定はされていない。

WIPPでは、廃棄物の定置が完了した処分パネルから、パネルの第1次封鎖が行われ、その後に処分パネルへの坑道を埋め戻す恒久的封鎖が行われる計画となっているが、今回のニューメキシコ州環境省(NMED)による廃棄物容器の隔離計画の提出命令は、上記のロスアラモス国立研究所の硝酸塩を含んだ廃棄物容器が定置されている第7パネル第7処分室及び第6パネルにおいて、類似の事象発生による被害を未然に防ぐために発せられたものである。DOE等が提出した廃棄物容器の隔離計画案に拠れば、今回の事象で爆発は生じていないと見られており、第7パネルに設置されていた圧力隔壁に圧力が掛かった痕跡も認められないことから、圧力隔壁等による第1次封鎖でも十分に有効との評価を示した上で、第1次封鎖の完了後に早期に恒久的封鎖を行う計画が示されている。恒久的封鎖については、掘削時に発生した岩塩で坑道を埋め戻す方式が提案されている。

なお、ニューメキシコ州環境省(NMED)の2014年5月20日の行政命令では、廃棄物容器の隔離計画の実施スケジュールも求められていたが、今回の廃棄物容器の隔離計画案では、放射線事象の原因も最終的に確認されていない中で多くの前提条件に基づいていること、様々な作業を並行的に行うことなどから、主要な工程ごとの作業日数が示されているのみであり、具体的な実施期日は示されていない。

【出典】

 

【2015年6月3日追記】

米国エネルギー省(DOE)及びニューメキシコ州環境省(NMED)は、2015年6月2日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日に発生した放射線事象の原因となった廃棄物容器の隔離が完了したことを公表した。今回の廃棄物容器の隔離は、2014年5月20日のNMEDの行政命令を受けたものであり、WIPPの地下に設置された処分パネルのうち、放射線事象の原因と断定されたロスアラモス国立研究所(LANL)から搬出された硝酸塩を含むTRU廃棄物が処分されている第6パネル及び第7パネル第7処分室について、それぞれ2015年5月13日及び5月29日に早期封鎖が完了したとしている。

第6パネル及び第7パネル第7処分室の封鎖は、吸気側及び排気側のそれぞれの坑道について、定置された廃棄物容器の側に金網(chain link)及び張出布(brattice cloth)を設置した上で、鋼製バルクヘッド(steel bulkhead)を設置することにより行われている。第6パネルの封鎖では、下図に示すように、廃棄物面に接する形で岩塩等を積み上げた障壁が設置されている。

なお、WIPPでは、2014年9月30日に復旧計画が公表され、2016年第1四半期の操業再開に向けて復旧活動が行われている。WIPPの放射線事象については、2015年4月16日に、DOEの事故調査委員会(AIB)の「事故調査報告書(フェーズ2)」が公表されており、2013年12月にロスアラモス国立研究所(LANL)で処理した1本の廃棄物容器での有機物質と硝酸塩との混合による発熱化学反応が放射線事象及び放射性物質の漏洩の原因と結論づけられている。

第6パネル封鎖の概念図(坑道の断面図)

第6パネル封鎖の概念図(坑道の断面図)

第7パネル第7処分室の封鎖のための金網・張出布の設置作業

第7パネル第7処分室の封鎖のための金網・張出布の設置作業

第7パネル第7処分室の入り口を密封する鋼製バルクヘッド

第7パネル第7処分室の入り口を密封する鋼製バルクヘッド

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )