Top » 海外情報ニュースフラッシュ » (個別記事表示)

§ 2015年6月2日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

英国のウェールズ政府が地層処分を高レベル放射性廃棄物等の管理方針として決定-処分の実施プロセス等に関する公開協議を開始-

タグ:

英国の地方自治政府の1つであるウェールズ政府は自身のウェブサイトにおいて、公衆との公開協議を経て、高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針を決定したことを公表した。また、地層処分施設のサイト選定プロセスに関する公開協議を開始した。

今回ウェールズ政府が決定した地層処分の方針は、英国政府が2008年に策定した白書 以降に示してきた方針と同様である。また、サイト選定プロセスに関してウェールズ政府が公表した協議文書では、英国政府が2014年7月に策定した白書 で示している地層処分施設のサイト選定プロセスと同様のプロセスを採用することを提案している。

 

■背景

英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されている1

2008年白書に基づく公募で関心表明を行った自治体

2008年白書に基づく公募で関心表明を行った自治体

英国政府は2008年に、ウェールズ政府及び北アイルランド政府とともに、高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針とその施設のサイト選定プロセスを定めた白書2 を策定した(以下「2008年白書」という)。2008年白書の公表とともに、地層処分施設のサイト選定プロセスに関心を示す自治体を含む地域の公募が開始され、カンブリア州及び同州内の2市が関心を表明したものの、2013年1月に選定プロセスから撤退している

上記の結果を受けて英国政府は、2013年5月より選定プロセスの見直しに向けた公開協議等を進め、2014年7月に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設の設置に向けた新たなサイト選定プロセス等を示した白書3 を策定し(以下「2014年白書」という)、英国政府及び実施主体は現在、その初期活動(2年間、2014年~2016年)を進めている

この2014年白書は、英国政府が単独で策定したものとなっており、2008年白書のようなウェールズ及び北アイルランド政府との共同文書とはなっていない。北アイルランド政府は2008年白書と同様に、2014年白書で規定される英国政府の方針や取組を支援することとしている。一方、ウェールズ政府は、2008年白書以降に示してきた現行の政策の再検討の是非について、2014年白書の策定前の段階から検討を進めていた。

なお、スコットランドについては、スコットランド政府が地層処分する方針を採用しておらず、地表近くに設置した施設で高レベル放射性廃棄物等の長期管理を継続することとしている。

 ■高レベル放射性廃棄物等の管理に関するウェールズ政府の現行政策の見直し

ウェールズ政府は、英国政府とともに2008年白書を策定したものの、地層処分の方針については保留しており(否定も肯定もせず、また、その他の管理オプションを支持することもしない)、ウェールズ内の自治体を含む地域がサイト選定プロセスに関心を表明する場合には、その時点において、地層処分プログラムと個々の関心表明についてウェールズ政府として取るべき立場を検討するとしていた。その後、ウェールズ政府は、ウェールズ内における新規原子炉の建設について、2008年当時は支持していなかったが、2012年に新設を支持する方針に転換した。このため、新規原子炉から発生する放射性廃棄物等の管理に関する現行政策(方針決定の保留)の見直しが必要となっていた。

このような背景のもと、ウェールズ政府は、2014年4月~6月にかけて、上記の現行政策の見直しの可否について、ステークホルダーからの見解を得るために、確かで根拠のある情報の提供(Call for Evidence)を募集した。ウェールズ政府は、その結果を踏まえて、現行政策を見直すことを決定し、地層処分が最も好ましい管理方策であるとするウェールズ政府の提案等を示した協議文書「高レベル放射性廃棄物等の管理・処分方針の見直し」を2014年10月に公表し、公衆との公開協議を2015年1月まで実施した。

ウェールズ政府は、公開協議で寄せられた意見を踏まえて、2015年5月19日、ウェールズ内で発生する高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針を決定したことを公表した。これと伴に、ウェールズ政府は、地層処分の実施方法に関する協議文書「高レベル放射性廃棄物等の地層処分:地域の参加と実施プロセス」を公表し、公衆との公開協議を開始した。同文書に対する公衆からの意見提出は2015年8月18日までとされている。この協議文書においてウェールズ政府は、2014年白書で示されたイングランドと北アイルランドにおける地層処分施設のサイト選定プロセスと同様のプロセスを採用することを提案している。

 

【出典】

 

【2015年12月18日追記】

英国の地方自治政府であるウェールズ政府は、2015年12月10日に、政策文書「高レベル放射性廃棄物等の地層処分:地域の参加と立地プロセス」の中で、ウェールズ政府も英国政府と同様のサイト選定プロセスを採用する方針であることを公表した。ただし、ウェールズにおいてサイト選定プロセスを進める上では、ウェールズ固有の状況での対応が取られることになるため、必ずしも同一のプロセスにはならないとしている。

■ウェールズにおけるサイト選定プロセスの現状

英国政府は、2014年7月に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設(GDF)の設置に向けた新たなサイト選定プロセス等を示した白書 (以下「2014年白書」という)を公表している。具体的なサイト選定プロセスは、以下の2つの段階(期間)で構成されており、英国政府は既に2年間の初期活動を開始している。

  • 英国政府及び実施主体による初期活動(2年間、2014年~2016年)
    ① 英国全土(スコットランドを除く)を対象とした「地質学的スクリーニング」
    ② 「2008年計画法」の改正、
    ③ 地域との協働プロセスの策定活動
  • 関心を表明した地域と実施主体との正式な協議(15~20年間、2016年以降)

今後、ウェールズでは、英国政府が先行して実施している上記①②③の活動について、歩調を合わせていくことになる。

①の「地質学的スクリーニング」については、2014年白書で示されたウェールズ政府の意向により、既にウェールズも対象として実施されている

②の「2008年計画法」の改正については、英国政府が、イングランドにおける地層処分施設(GDF)の開発を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト(NSIP)」の一つと位置づける立法措置として、2015年3月26日に制定された「2015年社会基盤計画(放射性廃棄物地層処分施設)令」によって2008年計画法の改正が行われた。しかし、対象はイングランドのみとなっている(2015年4月6日の追記を参照)。英国では地方自治政府に権限が委譲されているため、ウェールズにおいてGDFの設置が計画される場合は、2015年計画法(ウェールズのみが対象)のもとでウェールズ政府が許可を発給することになる。

③の地域との協働プロセスの策定については、「地域の代表のための作業グループ」(Community Representation Working Group、CRWG)の主導により、策定活動が進められている 。ウェールズ政府は、今回の政策文書の公表と同時に、CRWGに参加した。

【出典】


  1. 放射性廃棄物管理の権限は各地方自治政府に委譲されているが、各地方政府管轄内で発生した廃棄物を必ずしも管轄内で処分しなければならないということではない。なお、地方行政の観点では、ウェールズ、スコットランドならびに北アイルランドでは、それぞれ1999年に議会が設置され、地域主権(権限委譲)の体制整備が進められている。 []
  2. 正式名称「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み Defra、BEER並びにウェールズ及び北アイルランド自治政府による白書」(Cm 7386、2008年6月) []
  3. 正式名称「地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み」、DECC(2014年7月) []

(post by emori.minoru , last modified: 2016-03-18 )