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《フランス》原子力安全機関(ASN)が地層処分事業における「可逆性」に対する見解を表明

フランスの原子力安全機関(ASN)は、2015年1月20日付プレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2015年中にASNに提出予定である「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」に対する記載要求事項をまとめた2014年12月19日付けの書簡を公表した。ASNは、本書簡において、「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」のレビューを通じて、フランスの処分方針である「可逆性のある地層処分」の実現可能性を評価するが、その際に適用する「可逆性」に関する考え方を提示している。

ASNは、今回公表された書簡において、「可逆性」は以下2つの概念を含むことが適当であるとしている。

  • 適応性
    経験の蓄積や科学技術的な知見の向上によるフィードバック、政策や事業方針の変更、社会受容性の変化によって、処分シナリオが変わることを考慮して、設置許可申請段階で想定していた設計や操業方法を変更できること。
  • 回収可能性
    定置した廃棄物パッケージをある一定期間にわたって回収できることが担保されていること。

ASNは、ANDRAが作成する「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」において、ASNが提示した「可逆性」の考え方に沿って、処分施設が備える順応性(フレキシビリティ)の度合いを説明しなければならないとしている。ただし、ASNは、「可逆性」の正式な定義は、ANDRAが地層処分場の設置許可申請書を提出し、安全審査が行われた後に法律によって定められるものであるとしており、今回ASNは、この定義に抵触しないと考えられる範囲で「可逆性」の考え方を示したとしている。

「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」の作成とレビューの背景

フランスでは、原子力施設の設置許可申請に先立って、安全オプションをASNに提出し、その見解を求めることができるとされている1 。2013年5月から約7カ月間にわたって開催された地層処分プロジェクトに関する公開討論会を受け、ANDRAは、2014年5月に公開討論会の結果をふまえたプロジェクト継続に関する新たなスケジュール等を公表し、「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」を2015年中にASNに提出することを提案していた。2014年12月19日付けの書簡において、ASNは、これらの書類の提出に係るANDRAの決定を承諾し、レビューを実施するとしている。

「回収可能性の技術オプションに係る資料」の作成上の考慮事項

ANDRAは、公開討論会の結果をふまえた新たなスケジュール等の提案の中で、「回収可能性の技術オプションに係る資料」もASNに提出するとしていた。ASNは2014年12月19日付けの書簡において、「回収可能性の技術オプションに係る資料」の作成に当たって、ANDRAが考慮すべき事項を以下のように示している。

  • 特に処分空間やアクセス坑道が埋め戻された後は、廃棄物パッケージへのアクセスが困難になる。
  • 廃棄物パッケージの閉じ込め機能の健全性が損なわれた場合、放射線防護の点で大きな不都合が生じ、作業の可能性が制限される可能性がある。
  • 構築物の経年劣化や損傷(たとえば、処分空間の変形)により作業が困難になる。

「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」のレビュー要件

ASNは2014年12月19日付けの書簡において、ANDRAが「地層処分場の主要な技術オプション」及び「廃棄物パッケージの受入基準案」について、地層処分場全体(地上施設及び地下施設)をカバーしていることや、地層処分場の基本設計書の内容が2008年の地層処分に関するASN指針に整合していることを説明するとともに、操業のあらゆる段階の安全を確保するために採用された安全目標、設計、原則について網羅的に提示するようANDRAに要請している。さらにASNは、10件程度の具体的な要求事項を示しており、以下のような内容が含まれている。

  • 適用される規制基準・技術基準や国内外の経験のフィードバック
  • 2008年のASN指針や国際取組みに照らした長期的な操業における安全目標。採用された安全目標とASN指針に示された安全目標との間に差がある場合はその妥当性の証明。
  • 処分しようとする廃棄物のインベントリ、これらの廃棄物の処分方法へ適合させるためのコンディショニング方法、長期的な時間枠でのインベントリの変更に関する仮定
  • 地層処分場の建設から閉鎖後のモニタリング期間における、施設の安全性を考慮した操業範囲と主要なパラメータの初期状態の設定
  • 可逆性の概念としての処分場の適応性。特に、設計時に処分対象となっていない放射性廃棄物を処分することになった場合の容量の拡大可能性。

 

【出典】

  1. 原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(2007-1557)の第6条に規定。ASNは見解において、設置許可申請を行う場合、申請までに事業者が実施しておくべき補完的な研究や証明についても特定することができる []

(post by yokoyama.satoshi , last modified: 2023-10-12 )