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《スイス》原子力利用に関する国民発案が否決される

スイスでは、2003年5月18日(日)に原子力利用に関する2つの国民発案に対する国民投票1 が行われ、両発案とも反対多数により否決された。

モラトリアム・プラス:現行の原子力発電所の新規建設凍結(モラトリアム)をさらに10年間延長する。

・投票結果:否決【反対:58.4%、半州を含めた26州のうち24州が反対】 (投票率48.2%)

原子力に依存しない電力:使用済燃料の再処理禁止と原子力発電所の段階的閉鎖を実施する。

・投票結果:否決【反対66.3%、半州を含めた26州のうち25州が反対】 (投票率48.7%)

これらの国民発案は、憲法の一部改正を求めて、1999年に国民投票に必要な署名(18カ月以内に10万人以上)を集めて提出されており、正式に受理されていた。これに対して連邦議会は、2002年12月に連邦決議においてこれらの国民発案を拒否するよう国民に勧告していた。また、2001年2月から2003年3月までの約2年間の間、これらの国民発案に対する間接的な対案を包含して連邦政府から提出された新原子力法案が審議され、2003年3月21日に可決されている(新原子力法制定に関する詳細の情報は 既報 を参照)。

2つの国民発案が否決されたことにより、新原子力法は、同法第107条の規定に基づき公布されることとなる。なお、スイスでは、連邦法の施行にあたっては”任意の国民投票”2 という制度が適用されるため、公布後100日以内に5万人以上の署名が集まれば法律の施行に対する国民投票が行われることとなる(今後の新原子力法の発効までの流れは下図を参照)。

新原子力法では、高レベル放射性廃棄物処分事業に関する重要な規定として、処分場を含む原子力施設の概要承認3 (詳細はこちら)・建設・操業・閉鎖に関しては、連邦政府によってのみ許可発給されることが定められている。さらに、施設の概要承認の際には「任意の国民投票」制度が適用されることが規定されている他、建設および操業に関しては、州(および近隣自治体)が協議を行う権利を有していることが規定されている。また、使用済燃料の再処理については、現在結ばれている再処理契約が終了する2006年以降、10年間の凍結が規定されている。

新しい原子力法の発効までのフロー図

【出典】

  • 連邦政府ウェブサイト
    http://www.admin.ch/ch/d/pore/va/20030518/det501.html , http://www.admin.ch/ch/d/pore/va/20030518/det502.html
  • 新しい原子力法(Kernenergiegesetz) 2003.3
  • 2つのイニシアティブに対する連邦決議 http://www.admin.ch/ch/d/ff/2002/8154.pdf
  1. 国民発案および国民投票はスイスの憲法で認められているもので、国民は憲法の全面改正または一部改正を直接請求出来る権利を有している。連邦レベルでは、憲法の全面改正または一部改正を求める国民発案が提出された後、18カ月以内に10万人の署名が集まれば国民投票にかけらることができる。成立のためには、国民および州の両方で過半数の賛成が必要となる。なお、この場合の国民投票は下記の2)で説明する「任意の国民投票」との比較において、「義務的な国民投票」と呼ばれる。 []
  2. 任意の国民投票とは、連邦法や連邦政府の決定に対して、公布後100日以内に5万人の署名が集まればその施行の是非を国民投票にかけることができるというスイス特有の制度である。 []
  3. 概要承認とは、立地場所および処分プロジェクトの基本的事項に対する連邦評議会の許可のことを指す【原子力法に関する連邦決議】。 []

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )