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《フランス》地層処分場の閉鎖技術の安全性に関する規制機関等の見解が発表

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2014年12月16日付プレスリリースにおいて、原子力安全機関(ASN)が地層処分場における閉鎖技術の安全性に関するANDRAによる説明が十分であるとの見解を示すとともに、ANDRAに対して設置許可申請までに追加で詳細な情報の提供を求めた。ANDRAは、ASNからの要請により、2013年に閉鎖技術に関する詳細情報を提示していた。ASNからの見解を受け、今後、ANDRAは、すでに実施してきた研究の適切性を検証するとともに、地層処分場の設置許可申請に向けて実施する研究の方向性を検討するとしている。

地層処分場の閉鎖技術は、放射性廃棄物の閉じ込めを人間の行為を伴うことなく確保するため、地層処分場の処分孔、地下坑道、アクセス坑道をそれぞれ閉鎖するために用いる技術であり、主にベントナイトを使用した「プラグ」と呼ばれる構造物を設置することが計画されている。ANDRAのプレスリリースによれば、ASN及びASNの廃棄物担当常設専門家グループ1は、地層処分場における閉鎖技術に関して以下のような見解を示している。

  • 閉鎖技術の実現可能性について、ANDRAはすでに説得力のある要素を提示した。
  • ANDRAが提案した閉鎖技術は、必要な機能を有していることが実証されており、閉じ込め能力の確保のために設定している研究目標も適切である。

また、ASN及びASNの廃棄物担当常設専門家グループは、ANDRAに対し、設置許可申請時点までに、以下の事項に関する詳細な情報を提供するよう要請している。

  • Ÿ処分場設計の妥当性:2008年の地層処分に関するASN指針に従い、アクセス坑道ではなく、粘土層を放射性核種が移行するように採用した地層処分場の設計について、他の設計オプションと比較したうえで妥当性を立証する必要がある。
  • ŸASNが示した安全目標と地層処分場設計との整合性:カロボ・オックスフォーディアン粘土層には自己修復能力があり、坑道の掘削により損傷を受けても、時間の経過とともに本来の不浸透性を回復すると考えられている。しかし、ANDRAは安全裕度を確保するため、安全評価上は粘土層の自己修復能力を考慮していない。ANDRAは現時点までに実施された安全評価において、ASNが示す安全目標は遵守されているとの結果が得られたとしているが、実規模での試験が実施可能となるまで研究を継続し、自己修復能力を想定する場合としない場合のそれぞれについて、地層処分場設計との整合性を立証する必要がある。
  • Ÿ高レベル放射性廃棄物の処分孔のプラグに関する現時点における設計について、試験結果を提示する必要がある。

ANDRAは、上記のASNによる見解を受け、地層処分場の設置許可申請までの間に新たな安全評価を実施する方針である。なお、ANDRAは、この評価結果の検証を行うため、パイロット操業フェーズにおいて、実規模での試験を実施することを計画している。

 

閉鎖後安全性に関するレビューの経緯

ANDRAは、地層処分場の閉鎖技術の安全性について、2010年に原子力安全機関(ASN)に提出した報告書の中で、研究成果を示していた。しかし、ASNは、報告書で示された研究方針等を検討する中で、地層処分場の設置許可申請の審査に向けて追加情報を要求した。これを受けてANDRAは、2013年4月~8月にかけてASNに追加情報を提供していた。この情報を検討するに際してASNは、規制支援機関である放射性防護・原子力安全研究所(IRSN)へ技術的評価を依頼しており、IRSNは2014年7月1日に評価報告書を公表していた。このIRSNによる評価に基づいて、ASN及び廃棄物担当常設専門家グループは、それぞれ2014年7月と同年10月に研究方針の妥当性に関する判断を示していた。

 

【出典】

  • ANDRAウェブサイト、2014年12月16日付け公表情報「地層処分場閉鎖評価の総括」
    Retour sur l’évaluation des ouvrages de fermeture de Cigéo
    http://www.cigeo.com/tags/item/retour-sur-l-evaluation-des-ouvrages-de-fermeture-de-cigeo
  • 原子力安全機関(ASN) 2014年10月9日の見解書「閉鎖の実施に関して―深地層における放射性廃棄物プロジェクト」
    Dossier « projet de stockage de déchets radioactifs en couche géologique profonde – ouvrages de fermeture »
    http://www.cigeo.com/images/cigeo/blog/rapport_ASN.pdf
  • 放射性防護・原子力安全研究所(IRSN)報告書 No.2014-00006「深地層処分場における放射性廃棄物プロジェクト―閉鎖の実施に関して」(2014年7月1日の廃棄物担当常設専門家グループ会合にて公開)
    Projet de stockage Cigéo – Ouvrages de fermeture – Rapport IRSN n°2014-00006. Réunion du groupe permanent d’experts pour les « Déchets » du 1er juillet 2014
    http://www.cigeo.com/images/cigeo/blog/rapport_IRSN.pdf

※Cigéoは、フランス語のCentre industriel de stockage géologique pour les déchets HA et MA-VL(高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分産業センター)の略語である。

  1. ASNの諮問組織であり、廃棄物担当の専門家グループの他、原子炉、研究所・プラント、輸送、原子炉圧力機器についてそれぞれ常設専門家グループが設置されている []

(post by yokoyama.satoshi , last modified: 2023-10-11 )