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《英国》原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)が地質学的スクリーニングに関する技術イベントの報告書を公表

英国の高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(Radioactive Waste Management Limited, RWM)1 は、2014年9月30日にロンドンで地質学的スクリーニングに関する技術イベントを開催した。本技術イベントに関する報告書は、2014年10月16日付けの原子力廃止措置機関(NDA)のプレスリリースを通じて公表され、技術イベントの開催概要、プレゼンテーション資料などが取りまとめられている。

地質学的スクリーニングに関する技術イベントの開催背景

英国では、2014年7月にエネルギー・気候変動省(Department of Energy and Climate Change, DECC)が白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』 を公表している。本白書に基づいて、RWMが今後2年間をかけて、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングを実施する計画である。地質学的スクリーニングは、自治体を含む地域が地層処分施設の設置について検討を行う際、安全面において重要な地質に関する情報を利用できるようにするため、RWMが既存の地質情報を活用し、地層処分施設(GDF)の一般的なセーフティケース要件に基づき実施するものである。なお、地質学的スクリーニングの結果は、地層処分施設の設置に「適格」または「不適格」なエリアの判定やサイトの絞り込みに使用されるものではないと位置づけられている。

今回の技術イベントは、地質学的スクリーニングに対する英国市民の認知度を高めること、RWMが地質学的スクリーニングのガイダンス(後述の「地質学的スクリーニングの実施スケジュール」を参照)を策定するのに先立って、ステークホルダーからのフィードバックを得ることを目的として開催されたものである。RWMは、最初に地質学的スクリーニングのガイダンス案を策定し、独立したレビューパネルによる評価を受けた後、公開協議を経て完成したガイダンスを英国全土(スコットランドを除く)に適用する考えである。

2014年9月30日にロンドンで開催された技術イベントには、地球科学分野の団体のほか、多分野の学術組織、NGO等から80名を超える参加があったとしている。今後、ブリストル、バーミンガム、マンチェスター、リーズ、ニューキャッスルでも技術イベントが開催される予定である。

ロンドンで開催された技術イベントのプログラム

今回のロンドンで開催された技術イベントの概要を以下に示す。英国内外の専門家による講演の後、パネルディスカッションが行われ、英国地質調査所(BGS)のアンドリュー・ハワード博士、Intellisci社のアドリアン・バス博士、Geoscience社のトニー・バチェラー博士、Midland Valley Exploration社のロディー・ムーア博士がパネリストとして参加した。

●技術イベントの概要(2014年9月30日、ロンドン)
  講演者と講演内容の主なポイント
午前の部 ブルース・ケアンズ〔エネルギー・気候変動省(DECC)地層処分部門長〕

  • 英国の原子力の歴史とこれまでの放射性廃棄物管理プログラム
  • 地層処分する必要がある放射性廃棄物の種類と地層処分施設(GDF)の機能
  • 国際的な経験に基づくGDFプログラムのタイムスケール
アダム・ドーソン〔放射性廃棄物管理会社(RWM)サイト選定部門長〕

  • 地質学的スクリーニングにおいて実施することと実施しないこと
  • 「2016年までの2年間」における実施概要と主な活動の実施時期
  • 地質学的スクリーニングの結果におけるコミュニケーションとステークホルダーの関与
ニール・チャップマン〔シェフィールド大学教授、MCMインターナショナル〕

  • 諸外国の地層処分施設(GDF)プログラムで示された課題
  • スウェーデン、フィンランド、スイス、カナダ、日本、イタリアにおける初期でのスクリーニングの経験
  • 諸外国におけるアプローチと英国のアプローチに関する個人的見解
ニック・ビルハム〔地質学会(The Geological Society)政策・コミュニケーション部門長〕

  • 国内外における地質学会の広範なメンバーシップ
  • 独立したレビューパネルの設置に関する初期見解
  • サイト選定プロセスにおける地質学会のその他の役割
午後の部 ジェラルド・ブルーノ〔国際原子力機関(IAEA)放射性廃棄物・使用済燃料管理部門長〕

  • 地層処分施設(GDF)のサイト選定要件を含む、放射性廃棄物処分に関するIAEA指針
  • サイト選定プロセス
  • 英国のサイト選定プロセスにおけるIAEAの今後の関与の可能性と役割
ルーシー・ベイリー〔放射性廃棄物管理会社(RWM)閉鎖後安全マネージャー〕

  • RWMの多重バリアアプローチと一般的なセーフティケース
  • 閉鎖後の安全性
  • 地質環境の安全機能

 午前の部の最後には、午前の講演内容に関する質疑応答が行われ、会場からは以下のような質問が出された。

  • 地層処分施設はどのようなものなのか。
  • 他の分野から適用できるようなモデルはあるのか。
  • 地層処分される放射性廃棄物はどのようなものか。
  • 天然バリアと人工バリアがどのように共働するのかについて公衆は認知しているのか。
  • 地質学会はどのようにして、全ての構成グループを関与させることができるのか。
  • 現地での地質調査を含め、総費用はどのくらいになるのか。

地質学的スクリーニングの実施スケジュール

今回の技術イベントでの放射性廃棄物管理会社(RWM)サイト選定部門長であるアダム・ドーソン氏の講演資料において、地質学的スクリーニングの実施スケジュールが以下のように示されている。

  • 2014年9月:地質学的スクリーニング活動の開始
  • 2014年10月~2015年2月:放射性廃棄物管理会社(RWM)による地質学的スクリーニングのガイダンス案の検討
  • 2015年3月~4月:地質学会のレビューパネルによる地質学的スクリーニングのガイダンス案の独立したレビュー
  • 2015年5月~6月:地質学的スクリーニングのガイダンス案の更新
  • 2015年7月~10月:地質学的スクリーニングのガイダンス案についての公開協議
  • 2015年11月~2016年7月:地質学的スクリーニングのガイダンスの適用と地質学的スクリーニングの結果の整備(地質学的スクリーニングのガイダンスの適用と並行して、地質学会のレビューパネルがガイダンスの適用についての独立したレビューを実施)

また、地質学会(The Geological Society)政策・コミュニケーション部門長のニック・ビルハム氏の講演では、地質学的スクリーニングのガイダンス案のレビューなどを行う独立したレビューパネルが2014年末までに設置されることが示されている。

 

【出典】

  1. 放射性廃棄物管理会社(RWM)は、原子力廃止措置機関(NDA)の内部組織であった放射性廃棄物管理局(RWMD)を分離し、2014年4月にNDAの100%子会社として設立されたものであり、地層処分の実施主体となっている。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )