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《スペイン》集中中間貯蔵施設(ATC)の立地サイトを選定

スペインの産業・エネルギー・観光省は2011年12月30日付のプレスリリースにおいて、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設(ATC)1 をクエンカ県のビジャル・デ・カニャス自治体に建設Spain_mapすることが同日の閣議で決定されたことを公表した。

スペインでは、これらの放射性廃棄物を地層処分するという当初の計画に沿って1980年代より段階的な調査が実施されたが、その後に発生した反対運動により1998年にはサイト選定活動が中断された。その後の1999年に政府が承認した第5次総合放射性廃棄物計画(GRWP)では、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等の最終管理方策の決定を先送りすることとし、集中中間貯蔵施設の建設・操業を当面の最優先課題としている。なお、最終管理方策に関して第5次GRWPで変更された方針は、2006年に承認された最新の第6次GRWPでも踏襲され、引き続き最終管理方策の決定は先送りされているものの、地層処分を有力なオプションと位置付けており、採用された場合の計画等も示されている(2040年に地層処分場の建設開始、2050年に操業開始)。

集中中間貯蔵施設のサイト選定に関しては、2006年7月に承認された王令によって、同施設が遵守すべき基準の策定、及び同基準等に基づいて関心のある自治体の中から候補サイトの選定を行うための省庁間委員会が設置され、サイト選定に向けた準備が進められた。その後の2009年12月には、施設の受け入れに関心を示す自治体を募集するという公募によってサイト選定活動が開始され、応募した14の自治体のうち9自治体が2010年2月に正式な応募自治体として承認された。更に、2010年4月には、自然保護地域の関係から1つの自治体が選定手続きから除外され、最終的に8自治体が候補となっていた。

同プレスリリースによれば、今回の集中中間貯蔵施設を受け入れる自治体の決定は、候補サイトの選定を行うために設置された省庁間委員会が作成した各候補サイト(候補自治体)に関する報告書(提供される土地、プロジェクトに対する支援、地理的状況、地域における社会経済的効果など、様々な項目を分析)を詳細に検討した結果であるとしている。選定されたビジャル・デ・カニャス自治体は、施設のために提供される土地の面積、地形、地質、地盤、地震活動、気象、水文地質、周囲の危険設備の有無、市中心部からの距離などの項目で最も良い評価を得ており、更に、同自治体は集中中間貯蔵施設に必要とされる技術的特性をすべて備えている。また同自治体の失業率が高い状況にあることから、投資総額が約7億ユーロと見込まれる集中中間貯蔵施設プロジェクトによる社会経済的なプラスの効果も期待できると判断された。

今後は、原子力施設としての、及び環境分野における各種許認可手続きを含めた、集中中間貯蔵施設の建設開始に向けた手続きが進められる予定である。

【出典】

【2013年11月1日追記】

スペインの放射性廃棄物管理の実施主体であるスペイン放射性廃棄物管理公社(ENRESA)は、2013年10月30日付のプレスリリースにおいて、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設(ATC)の立地及び建設の許可申請を2013年中に行う予定であることを公表した。

スペインでは、集中中間貯蔵施設を含む原子力施設は、立地、建設、操業の各段階で許可を取得する必要がある。これらの許可は、原子力安全審議会(CSN)の評価を踏まえ、産業・エネルギー・観光省(MINETUR)が発給するが、立地及び建設の許可については同時に申請できることが原子力施設規制令に規定されている。

ENRESAは、ATCの立地サイトにおける地質、水文地質、気象、地震活動、地震危険度等の詳細な特性調査を実施しており、これらの結果はENRESAの学際的専門家チームによるレビュー後、許可申請書に反映するとしている。

【出典】

  • 原子力施設規制令(1836/1999.12.3)
  1. スペイン語のAlmacén Temporal CentralizadoからATCとも称される。なお、同貯蔵施設には、関連する技術センターが併設される計画である。 []

(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )