諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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HLW:US:chap5

米国 米国における高レベル放射性廃棄物処分

米国における高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


5. 処分事業の資金確保

5.1 処分費用の確保(制度)

ポイント

  • 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、1982年放射性廃棄物政策法の第111条により、廃棄物発生者及び所有者が負担することとなっており、そのために同法第302条により放射性廃棄物基金(NWF)が財務省に設置されています。廃棄物発生者である原子力発電事業者は、発電1kWh当たり1ミル(約0.1円)を同基金に拠出しています。処分費用の総額は2007年価格で約962億ドル(約11兆5,000億円)と見積られています。また、同基金の積立額は2015年9月末の時点で約424億ドル(約5兆900億円)です。(1ドル=120円として換算)。ただし、裁判所の判決に基づいて、2014年5月より同基金への拠出が停止されました。

処分費用の負担者

米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第111条により、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を永久処分することは連邦政府の責任となっていますが、処分に要する費用は高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の発生者及び所有者の責任であると規定されています。


処分費用の確保制度

米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第302条に基づいて放射性廃棄物基金(NWF)が財務省に設置され、また、廃棄物発生者である原子力発電事業者は、同基金に拠出金を支払うことによって処分事業に必要な費用の負担責任を果たすように規定されています。拠出金は、使用済燃料を発生させる原子力発電の販売電力1kWh当たり1ミル(0.001ドル)とされており、これは電力利用者の電気料金に反映されています。

放射性廃棄物基金(NWF)では、下記に列挙する高レベル放射性廃棄物処分に必要な資金が確保されることになっています。

  1. 1982年放射性廃棄物政策法に基づいて設置される地層処分場、中間貯蔵施設、試験・評価施設のサイト選定、開発、許認可活動、廃止措置及び廃止措置後の維持及びモニタリング
  2. 1982年放射性廃棄物政策法に基づく研究開発及び実証(一般的なものを除く)を実施するための費用
  3. 地層処分場での処分、中間貯蔵施設での貯蔵、試験・評価施設での使用のための、高レベル放射性廃棄物の輸送、前処理、パッケージへの封入
  4. 地層処分場サイトの施設、中間貯蔵施設サイトの施設、試験・評価施設サイトの施設、並びにこれらの施設の必要施設もしくは付随施設の取得、設計、改造、建て替え、操業、建設
  5. 州、郡及びインディアン部族への補助金
  6. 高レベル放射性廃棄物プログラムの一般管理費用

また、1982年放射性廃棄物政策法では、基金に組み入れられるすべての資金は財務省によって管理され、財務省短期証券と呼ばれる米国債を通じて投資運用するように定められています。2015年9月末で保有されている米国債の市場価格は約424億ドル(約5兆900億円)です。

なお、連邦控訴裁判所の2014年11月19日の判決により、放射性廃棄物基金への拠出金額を1ミル/kWh からゼロに変更する提案が2014年5月16日に有効となり、放射性廃棄物基金への拠出が実質的に停止されました。


5.2 処分費用の見積り

DOEのトータル・システム・ライフサイクル・コスト分析報告書
DOEのトータル・システム・ライフサイクル・コスト分析報告書
Analysis of the Total System Life Cycle Cost of the Civilian Radioactive Waste Management Program, Fiscal Year 2007

米国における高レベル放射性廃棄物の処分費用の総額は、2007年価格で約962億ドル(約11兆5,000億円)と見積られています。このうち、1983年から2006年の間に135億ドルが支出され、残りの826億ドルは2007年から処分場が閉鎖される2133年の間に支出されると想定されています。この見積りは、商業用の原子力発電による使用済燃料109,300トン(重金属換算、以下同じ)、政府が所有する使用済燃料2,500トン及びガラス固化体19,667本(10,300トン相当)の受け入れ及び処分に伴うすべての費用を回収することを前提として試算されています。したがって、1982年放射性廃棄物政策法での処分量の制限とは異なり、全部で122,100トン以上の受け入れが可能な一つの処分場での処分が仮定されています。費用見積額の内訳としては、地層処分費用が約647億ドル(約7兆7,600億円)、廃棄物受け入れ・輸送費用が約203億ドル(約2兆4,400億円)など、さまざまな費用が想定されています。(1ドル=120円として換算)

年度別にみた費用の概要
年度別にみた費用の概要
(2007年度トータル・システム・ライフサイクル・コスト分析報告書から作成)
※同報告書では、2017年に処分場の操業を開始する前提で費用見積を実施


ブルーリボン委員会が勧告した資金確保策

ブルーリボン委員会が2012年1月26日にエネルギー長官に提出した最終報告書においては、長期的な措置として、新たな廃棄物管理組織が単年度予算から独立し、連邦議会の監督のもとで、自らの民間放射性廃棄物関連の義務を果たすことができるよう、基金の未使用残高を新たな廃棄物管理組織に移管するための法律が必要であると勧告しています。

この勧告を受けて検討されている連邦議会上院の法案やDOE の処分戦略では、これから支払われる拠出金は今までの放射性廃棄物基金とは別の新しい基金に払い込み、特に法律で禁じられなければ実施主体が処分のため自由に使えるような制度改革が提案されています。



備考:通貨換算には、日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート(平成26年12月中において適用)を使用しています。

  • 1米ドル=120円として換算


全体構成
米国
hlw/us/chap5.1458179894.txt.gz · 最終更新: 2016/03/17 10:58 by sahara.satoshi