諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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-~~ShortTitle:5.処分事業の資金確保~~+~~ShortTitle:5.情報提供・コミュニケーション~~
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
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 {{anchor:chap5}} {{anchor:chap5}}
-====== 5. 処分事業の資金確保 ======+====== 5. 情報提供・コミュニケーション ======
  
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-====== 5.1 処分費用確保(制度) ======+====== 5.1 公衆と対話 ======
  
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 {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
-  * 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、1982年放射性廃棄物政策法の第111条により廃棄物発生者及び所有者負担することなっり、ため同法第302条により**放射性廃棄物基金(NWF)**が財務省に設置されてい。廃棄物発生者であ原子力発電事業者は、発電1kWh当り1ミル(約0.1円)同基金に拠出しています。処分費用総額は2007年で、約962億ドル(約10兆4,000億円)と積られています。また、同基金積立額201012時点で約358億ドル(約3兆8,700億円)です。(1ドル=108円とて換算)+  * 1982年放射性廃棄物政策法ではエネルギー長官ユッカマウンテンを処分場サイト推薦するに当たり、地域住民対し、検討状況につて情報を提供し、サイト推薦に対する意見を求めるめ、サイトの近辺で公聴会開催することを定めています。他、環境影響評の手続住民やさまざまな関係者に情報を提供し、意を求めることが必要とされています。 
 +  * また、地元ネバダ州には、サイト推薦に不承認意思を表明することが認められていますが、連邦議会それを覆すことが可能とされており、20027に連邦議会立地承認決議が行われま
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-===== 処分費用の負担者 ===== 
  
-米国では、1982年放射性廃棄物政策法の第111条により、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を永久処分するこは連邦政府責任となっていますが、処分に要する費用は高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の発生者及び所有者の責任であると規定されています。+===== 情報提供住民コメント募集 =====
  
-\\ +ネバダ州ユッカマウンテンを処分場サイトとして推薦し、処分場建設の許認可を行うためには、2つの枠組みで情報の提供とコメント募集が行われることとなっています。
-===== 処分費用確保制度 =====+
  
-米国では、1982年放射性廃棄物政策法第302条基づいて**放射性廃棄物基金(NWF)**財務省に設置され、また、廃棄物発生者である原子力発電事業者は、同基金に拠出金を支払うことによって処分事業に必要な費用の負担責任を果たすように規定されています。拠出金は使用済燃料発生せる原子力発電販売電力1kWh当たり1ル(0.001ドルとされており、これは電力利用者電気料金に反映されています。+1つ環境影響評価の手続で計画段階やドラフト環境影響評価書公表後公聴会やパブリックコメントの募集が必要されています。ユッカマウンテンの環境影響評価でも計画段階で15 回の公聴会が1995年に行われたの始め多くの公聴会が開催れ、2002年サイト推薦までに1万件以上のコメントが寄せられ、エネギー省DOE)の回答が示されています。
  
-放射性廃棄物基金(NWF)で、下記に列挙する高レベル放射性廃棄物処分に必要資金が確保されとになっています。+もう1つ1982年放射性廃棄物政策法で定められた処分特別手続です。特に、エネルギー長官によ大統領へのサイト推薦に際しては、同法第114条等により、ユッカマウンテン・サイト周辺の住民に対し、情報の提供コメント募集のため、事前サイト周辺で公聴会を行うことが求められています。
  
-  - 1982年放射性廃棄物政策法に基づいて設置される地層処分場中間貯蔵施設、試験・評価施設のサイト選定、開発、許認可活動、廃止措置及び廃止措置後維持及びモニタリング +====[情報提供]==== 
-  - 1982年放射性廃棄物政策法に基づく研究開発及び実証(一般的なものを除く)を実施するための費用 +DOE は、サイト推薦のための情報提供として公聴会などに先立って科学的根拠を示した「ユッカマウンテン科学工学報告書」とドラフト環境影響評価補足書「予備的サイト適合性評価報告書」などを公表しています。
-  - 地層処分場での処分中間貯蔵施設での貯蔵試験・評価施設での使用のための、高レベル放射性廃棄物の輸送、前処理、パッケージへの封入 +
-  - 地層処分場サイトの施設、中間貯蔵施設サイトの施設、試験・評価施設サイトの施設、並びにこれらの施設の必要施設もくは付随施設の取得、設計、改造、建替え、操業、建設 +
-  - 州、郡及びインディアン部族への補助金 +
-  - 高レベル放射性廃棄物プログラムの一般管理費用+
  
-また1982放射性廃棄物政策法では、基金に組み入れれるすべての資金は財務省よっ管理され財務省短期証券呼ばれ米国債通じて投資運用するように定められていま。2014年9月末保有されている米国債の市場価格は約398億ドル(約4兆3,000億円)です+====[住民のコメント募集]==== 
 +DOEは20015月か12月かけて、ユッカマウンテン・サイト周辺での公聴会、ユッカマウンテンのサイト推薦に関すパブリックコメントの募集いました公聴会はネバダ州17郡とカリフォルニア州1郡開催されました
  
 +パブリックコメントは約4,600件が寄せられ、その結果を検討した上で、上の「情報提供」の項で示した各報告書が改定されています。また、寄せられたコメントの要約とそれに対するDOEの回答をまとめた「サイト推薦コメント要約文書」も発表しています。
  
 +\\
 +===== 地元の意思表明と許認可手続への参加 =====
 +1982年放射性廃棄物政策法では、州や地元自治体等が処分場開発に係る意思決定手続に参加できる仕組みも定められています。
  
-<WRAP clear></WRAP>+まずサイト推薦の手続では、エネルギー長官が大統領に処分場のサイト推薦を行う決定をした場合には、事前にネバダ州知事と州議会に通知を行うことが必要とされています。そして、州知事または州議会は、大統領から連邦議会へのサイト推薦について、60日以内に不承認通知を連邦議会に提出することができることも決められています。しかし、この州の不承認通知は、連邦議会が覆すことが可能となっています。ユッカマウンテンのサイト推薦では、前述の通り、この手続に従って連邦議会が立地承認決議を行い、地元ネバダ州の不承認は覆されています。 
 + 
 +また、米国では原子力施設の許認可手続では裁判に似た形で審理が行われますが、州と関連する自治体などは、この審理に当事者として参加することが認められています。ユッカマウンテンの審理手続では、ネバダ州及び同州の7つの郡の他、カリフォルニア州なども当事者として参加が認められ、特にネバダ州は、200件以上の論点を提出して、争う姿勢を示していました。 
 + 
 +なお、前述の通り、このような手続への参加が行えるよう、州や関連する自治体等には放射性廃棄物基金(NWF)から補助金が支給されます。 
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 +<WRAP clear/>
  
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-====== 5.2 処分費用の見積り ======+====== 5.2 意識把握と情報提供 ======
  
-<WRAP rss right 300px+<WRAP round box
-{{:hlw:us:doe-tslcc2007-image.png?200&nolink|DOEのトータル・システム・ラフサイクル・コス分析報告書}}\\ +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ト}} 
-DOEトータル・シスライフサイル・コス分析告書\\ +  * 実施主体のエネルギー省(DOE)は、インターネッやインフォメション・センーなどによって地元住民だけでなく国民全体の理解促進のためにユッカマウンプロジェクトの情提供活動を行っていましたが、現政権のユッカマウンテン計画中止の方針に伴い、こうした情報提供活動は廃止されています。
-<fs 70%>//Analysis of the Total System Life Cycle Cost of the Civilian Radioactive Waste Management Program, Fiscal Year 2007//</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
-米国における高レベル放射性廃棄物の処分費用の総額は、2007年価格で、約962億ドル(約10兆4,000億円)と見積られています。このうち、1983年から2006年の間に135億ドルが支出され、残りの826億ドルは2007年から処分場が閉鎖される2133年の間に支出されると想定されています。この見積りは、商業用の原子力発電による使用済燃料109,300トン(重金属換算、以下同じ)、政府が所有する使用済燃料2,500トン及びガラス固化体19,667本(10,300トン相当)の受け入れ及び処分に伴うすべての費用を回収することを前提として試算されています。したがって、1982年放射性廃棄物政策法での処分量の制限とは異なり、全部で122,100トン以上の受け入れが可能な一つの処分場での処分が仮定されています。費用見積額の内訳としては、地層処分費用が約647億ドル(約6兆9,900億円)、廃棄物受け入れ輸送費用が約203億ドル(約2兆1,900億円)など、さまざまな費用が想定されています。(1ドル=108円として換算)+===== 広報情報提供活動 =====
  
-<WRAP clear></WRAP>+実施主体のエネルギー省(DOE)は、1982年放射性廃棄物政策法で必要とされる地元住民や公衆に対する情報提供活動の他に、地元住民や国民全体の理解促進のための情報提供活動も行っていました。その主な方法としては、小冊子やインターネットによるものと、インフォメーション・センターによるものがあります。
  
-<WRAP rss> +====[小冊子やインタネットでの情報供]====
-{{:hlw:us:total-system-lifecycle-cost-2007.png?720&nolink|年度別にみた費用の概要}}\\ +
-<fc #080>年度別にみた費用の概要</fc>\\  +
-(2007年度トタル・システム・ライフサイクル・コス分析報告書から作成)\\ +
-<fs 90%>※同報告書は、2017年に処分場操業を開始する前で費用見積を実施</fs> +
-</WRAP>+
  
-<WRAP clear></WRAP>+DOEの民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)は、許認可申請書等の正式文書や専門的な分析報告書など膨大な情報の公開に加え、一般市民にも理解しやすいように工夫されたパンフレットなども作成し、ウェブサイトでも提供していました。
  
-\\ +2002年1月には、ユッカマウンテンのサイト推薦関連の情報提供として、『何故、ユッカマウンテンか?』『ユッカマウンテン・プロジェクトのQ&A』などの小冊子がウェサイトでも公開されたほか、『科学、社会、そしてアメカの放射性廃棄物』というオライン教育カリキュラムも1992年から改定を重ねて公開されていました
-===== ルー委員会が勧告した資金確保策 =====+
  
-ブルーリボン委員会が2012126日にエネルギー長官に提出した最終報告書においては、長期的な措置とて、新な廃棄物管理組織単年度予算から独立し連邦議会監督もとで、自らの民間放射性棄物関連の義務を果たすことができるよう、基金の未使用残高を新たな廃棄物管理組織に移管するための法律が必要であると勧告しています。+20086の建設認可係る許認可申請書の提出後には、『ユッカマウンテン安全性説明』及び『ユッカマウンテンにおける国の処分場』とう小冊子が作成され、ウェブサイトでも公開されいましたが、現政権ユッカマウンテン計画中止方針に従ってウェブサイトは止されています。
  
-この勧告を受けて検討されている連邦議会上院の法案やDOE の処分戦略では、これから支払われる拠出金は今までの放射性廃棄物基金とは別の新しい基金に払い込み、特に法律で禁じられなければ実施主体が処分のため自由に使えるような制度改革が提案されています。 
  
 +====[インフォメーション・センター]====
  
 +ユッカマウンテン最寄りの町パーランプには、DOEのOCRWM のインフォメーション・センターが設置されていました。同センターでは、展示、ビデオ・ディスプレイ、対話型コンピュータ・プログラム、その他教育プログラムが整備され、またバーチャルリアリティにより処分場の内部に入る擬似体験ができるようになっていました。
  
 +ただし、その後の予算削減の影響や現政権のユッカマウンテン計画中止方針によりインフォメーション・センターは閉鎖されています。
 +
 +
 +<WRAP clear/>
  
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-<WRAP note> 
-<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1412.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成25年12月中において適用)を使用しています。</wrap> 
-  * <wrap lo>1米ドル=108円として換算</wrap> 
-</WRAP> 
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/us/chap5.1445229351.txt.gz · 最終更新: 2016/03/17 10:58 (外部編集)