諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

Learn from foreign experiences in HLW management

ユーザ用ツール

サイト用ツール


hlw:uk:chap3

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
次のリビジョン
前のリビジョン
hlw:uk:chap3 [2015/05/12 07:57] – [3.1 実施体制] sahara.satoshihlw:uk:chap3 [2017/10/27 18:49] (現在) – 外部編集 127.0.0.1
行 1: 行 1:
-~~bc:3.処分事業に係わる制度/実施体制~~+~~ShortTitle:3.実施体制と資金確保~~
 <WRAP pagetitle> <WRAP pagetitle>
 ==HLW:UK:chap3== ==HLW:UK:chap3==
行 15: 行 15:
   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
行 28: 行 27:
 \\ \\
 {{anchor:chap3}} {{anchor:chap3}}
-====== 3. 処分事業に係わる制度/実施体制 ======+====== 3. 処分事業実施体制と資金確保 ======
  
 {{anchor:b1}} {{anchor:b1}}
行 36: 行 35:
 {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
   * 英国では、政府が高レベル放射性廃棄物等の処分における放射性廃棄物管理方針の決定、サイト選定の実施などを行っています。高レベル放射性廃棄物処分の安全規制は、原子力規制局(ONR)や各自治政府が設置している環境規制当局が担当しています。   * 英国では、政府が高レベル放射性廃棄物等の処分における放射性廃棄物管理方針の決定、サイト選定の実施などを行っています。高レベル放射性廃棄物処分の安全規制は、原子力規制局(ONR)や各自治政府が設置している環境規制当局が担当しています。
-  * 実施主体は原子力廃止措置機関(NDA)す。地層処分計画立案及び開発は、NDAの子会社である放射性廃棄物管理会社(RWM社)が担当しています。+  * 原子力廃止措置機関(NDA)は、放射性廃棄物の長期管理に関する政府の政策を実施します。地層処分に関する政府政策の実施は、NDA の完全子会社である放射性廃棄物管理会社(RWM 社)が担当しています。
 </WRAP> </WRAP>
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 実施体制の枠組み ===== ===== 実施体制の枠組み =====
  
-<WRAP rss> +英国では、英国政府〔ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)〕及び自治政府〔ウェールズ政府(WG)と北アイルランド政府〕が、放射性廃棄物の管理及び方針の決定、サイト選定プログラムの実施、ステークホルダーとの連携などに対する責任を有しています。 
-{{:hlw:uk:organisation-uk.png?720&nolink|英国における放射性廃棄物処分の実施体制}}\\ +英国政府及び自治政府助言を与え諮問組織として、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)があり、地層処分の具体化に向けた実施計画を独立に精査する役割が与えらています。
-<fc #080>英国における放射性廃棄物処分の実施体制</fc>\\ +
-<fs 90%>※地域地パートナーシップは、自治体がサイト選定プロセス参加意思を表明した以降に設置されます。</fs>+
  
-</WRAP>+[{{:hlw:uk:実施体制2017.png?640|英国における放射性廃棄物処分の実施体制| 
 +<fc #080>放射性廃棄物処分の実施体制</fc> 
 +}}]
  
 +\\
  
-<WRAP rss right box 300px> +英国では、放射性廃棄物を処分するためには、2つの許可 ─ ①放射性廃棄物を処分するための許可、②原子力施設の操業及び建設などの許可(原子力サイト許可) ─ の両方が必要です。
-**[3]各自治政府が設置している環境規制当局**の名称 \\ +
-連合王国を構成するイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各自治政府が設置している環境規制当局は以下の通りです。 +
-  *イングランドとウェールズ:\\ 環境規制機関(EA) +
-  *スコットランド環境保護局(SEPA) +
-  *北アイルランド環境省(DoENI) +
- +
-イングランドとウェールズは、共同で1つの環境規制当局を設置しています。 +
-</WRAP> +
- +
- +
-英国では、エネルギー・気候変動省(DECC)、環境・食糧・農村地域省(Defra)、ウェールズ政府(WG)及び北アイルランド環境省(DoENI)が、放射性廃棄物の管理及び方針の決定、サイト選定プログラムの実施、ステークホルダーとの連携などに対する責任を有しています。英国政府及び自治政府に助言を与える諮問組織として、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)があり、地層処分の具体化に向けた実施計画を独立に精査する役割が与えられています。 +
- +
-英国では、放射性廃棄物を処分するためには、2つの許可①放射性廃棄物を処分するための許可、②原子力施設の操業及び建設などの許可(原子力サイト許可)の両方が必要です。 +
   * 放射性廃棄物を処分するための許可は、連合王国を構成する各自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)が設置している環境規制当局が発給します。例えば、処分場の立地点がイングランド領域内であれば、イングランドを管轄する環境規制機関(EA)が行います。   * 放射性廃棄物を処分するための許可は、連合王国を構成する各自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)が設置している環境規制当局が発給します。例えば、処分場の立地点がイングランド領域内であれば、イングランドを管轄する環境規制機関(EA)が行います。
 +  * 原子力施設の操業及び建設などの許可は、原子力規制局(ONR)が発給します。ONR は、保健安全執行部(HSE)の内部組織でしたが、2013年エネルギー法により、原子力施設に係る安全管理や放射性廃棄物の輸送などを所管する独立した規制当局になっています。
  
-  * 原子力施設の操業及び建設などの許可は、原子力規制局(ONR)が発給します。ONRは、保健安全執行部(HSE)の内部組織ですが、2013年エネルギー法(2013年12月成立)により、原子力施設に係る安全管理や放射性廃棄物の輸送などを所管する独立の規制当局となります。 +英国では、地層処分の実施面において、自治体と協力して作業を進める主体的参加方式を取り入れています。自治体は、地層処分施設サイト選定プロセスに関して実施主体と正式な話を開始することができます。た、十分な情報が提供された上での地 
- +層処分設の受け入れ関する住民の支持調査・確認するまで、いつでも撤退できるています。
-英国では、地層処分の実施面において、地元の主体的参加と地域とのパートナーシップが重視されておりこの戦略を2008年6月の政府白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」で明確にいます。パートナーシップは法律で設置され住民に行政サービスを直接提供する組織はありませんが、地域戦略的意思決定を行うレベルで活動し、加盟する自治体の意思決定に助言を行います。地層処分場プロジェクトについても、その立地選定から建/操業など課題取り組むパートナーシップ設立するになっています。+
  
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
 \\ \\
 ===== 実施主体 ===== ===== 実施主体 =====
  
-英国の高レベル放射性廃棄物の処分実施主体原子力廃止措置機関(NDA)す。NDAは、老朽化した原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の中間貯蔵を安全に行うために、2005年に設立された政府郭団体です。英国における放射性廃棄物の処分方針の策定を受けて、それらの処分を実施する役割が加えられました。処分方針決定後2007年4月より処分実施主体となりました。同時に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分場の計画立案や開発のほか、地層処分以外の方法で処分する放射性廃棄物の全体計画立案などを行うために、NDAの内部組織として放射性廃棄物管理局(RWMD)設置されてい。NDAは、将来的にRWMDを分離・企業化する方針です+英国の放射性廃棄物の長期管理に関する政府の政策は原子力廃止措置機関(NDA)が実施し、高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する政府の政策は放射性廃棄物管理会社(RWM社)が実施します。NDAは、老朽化した原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の中間貯蔵を安全に行うために、2005年に設立された政府外公共機関です。英国における放射性廃棄物の処分方針の策定を受けて、それらの処分を実施する役割が加えられました。処分方針決定後に必要な法改正が行われ、2007年4月より処分実施主体となりました。同時に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分場の計画立案や開発のほか、地層処分以外の方法で処分する放射性廃棄物の全体計画立案などを行うために、NDAの内部組織として放射性廃棄物管理局(RWMD)設置した。NDAは、2014年4月にRWMDを分離し、NDAの完全子会社として、放射性廃棄物管理会社(RWM社)を設立しました
  
-<WRAP clear></WRAP>+ 
 +<WRAP clear/>
 \\ \\
-===== 安全規則 …処分の安全性確保のための指針 =====+===== 安全規則 =====
  
 <WRAP rss right 300px> <WRAP rss right 300px>
行 88: 行 75:
 </WRAP> </WRAP>
  
-英国では、2009年2月イングランドとウェールズ環境規制機関(EA)などが、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設に関する許可申請を検討する際の基礎となる原則及び要件について記載した「地層処分施設の許可要件に関するガイダンス」を策定しました。このなかで、地層処分施設の開発者・操業者が満たすべき管理要件、サイトの使用、当該施設の設計、建設、操業及び閉鎖に関して満たさなければならない放射線学的及び技術的な要件などを示しています。+英国では、2009年2月当時、イングランドとウェールズを所掌していた環境規制機関(EA)などが、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設に関する許可申請を検討する際の基礎となる原則及び要件について記載した「地層処分施設の許可要件に関するガイダンス」を策定しました。このなかで、地層処分施設の開発者・操業者が満たすべき管理要件、サイトの使用、当該施設の設計、建設、操業及び閉鎖に関して満たさなければならない放射線学的及び技術的な要件などを示しています。
  
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
  
行 118: 行 105:
  
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 \\ \\
 {{anchor:b2}} {{anchor:b2}}
 +====== 3.2 処分費用の確保 ======
 +
 +<WRAP round box>
 +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
 +  * 英国では、放射性廃棄物の処分費用はその発生者が負担することとされています。廃棄物発生者である電力会社は、引当金として廃棄物処分費用を確保しています。
 +  * 再処理施設などを所有する原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物については、その処分費用は英国政府の負担(国税で負担)です。地層処分の実施主体でもあるNDAは、将来に支出する地層処分費用を負債として英国政府に計上しており、2015年末での負債額を約143億ポンド(約1兆8,300億円)と算定しています。
 +</WRAP>
 +<WRAP clear/>
 +
 +===== 処分費用の負担者 =====
 +
 +英国では、放射性廃棄物の発生者と所有者は、規制コストや自身、あるいは規制機関が行う関連研究のコストを含めて、廃棄物を管理・処分するコストを負担する責任があるとされています。また、放射性廃棄物の管理・処分に伴う債務をその発生前から見積っておき、それを満たす適正な資金を引き当てておかなければならないこととされています。
 +
 +
 +
 +\\
 +===== 処分費用の確保制度 =====
 +
 +英国では、放射性廃棄物管理費用の確保のための公的な基金制度はありません。このため、英国で唯一の民間原子力発電事業者であるEDFエナジー社(2009年にブリティッシュ・エナジー社を買収したフランス電力の英国子会社)は、放射性廃棄物管理費用を引き当てています。2015年末時点では、12.9億ユーロ(約1,470億円)を引当金として確保しています。
 +
 +新規原子炉の廃止措置及び新規原子炉から発生する放射性廃棄物の管理費用については、2008年エネルギー法により、原子力発電事業者が自らの負担分全額を賄うための確実な資金確保措置を講じることになっています。
 +
 +一方、再処理施設や既に運転を停止したガス冷却炉を含め、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する原子力施設の廃止措置費用や放射性廃棄物の管理費用は、NDAが行う地層処分事業の費用とともに、英国政府が負担(国税で負担)することになります。NDAは、それらの費用を負債として、英国政府に計上します。NDAは、廃止措置や廃棄物管理の事業を進めつつ、事業効率の改善を図ることで負債の圧縮を図ります。
 +
 +
 +<WRAP clear/>
 +
 +\\
 +{{anchor:d2}}
 +===== 処分費用の見積もり =====
 +
 +[{{ :hlw:uk:nda-annual-expenditure-profile.png?300|地層処分場に関する将来支出額の推移見込み|
 +<fc #080>地層処分場に関する将来支出額の推移見込み</fc>\\
 +<fs 70%>source: NDA Annual Report and Accounts 2007/08</fs>
 +}}]
 +
 +
 +2007年4月に原子力廃止措置機関(NDA)は、2007年次会計報告書(2008年3月末)で地層処分場に関する費用見積りを公表しています。これによると、廃止措置なども含めた地層処分場に関する総見積費用(割引前の金額)は、2008年の価格で122億ポンド(約1兆5,600億円)です。このうち、NDA が支出する分は約83%(101億ポンド)、残りはNDA以外の処分場利用者が負担すべき金額としています。
 +
 +NDA は2015年次会計報告書において、地層処分に関する費用を143億ポンド(1兆8,300億円)と算定しています。この算定額は、NDAが支出する将来費用を年あたり2.2%で割引した額です。(1ポンド=128円として換算)。
 +
 +
 +
 +<WRAP clear/>
 +
 +\\
 +====== ======
 +\\
 +<WRAP note>
 +<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1612.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成28年12月中において適用)を使用しています。</wrap>
 +  * <wrap lo>1英ポンド=128円として換算</wrap>
 +</WRAP>
 +
 +
 +
 +
 +
 +/* ################################################################################################
 ====== 3.2 処分に関わる法制度 ====== ====== 3.2 処分に関わる法制度 ======
  
行 143: 行 188:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 安全規制 ===== ===== 安全規制 =====
行 157: 行 202:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 資金確保 ===== ===== 資金確保 =====
行 169: 行 214:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 環境 ===== ===== 環境 =====
行 182: 行 227:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 原子力責任 ===== ===== 原子力責任 =====
行 194: 行 239:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+################################################################################################ */ 
 +<WRAP clear/>
  
 \\ \\
行 217: 行 263:
   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/uk/chap3.1431385064.txt.gz · 最終更新: 2015/05/12 07:57 by sahara.satoshi