諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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-~~bc:4.処分地選定の進め方と地域振興~~+~~ShortTitle:4.処分地選定の進め方と地域振興~~
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 ==HLW:FI:chap4== ==HLW:FI:chap4==
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
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 ====== 4.1  処分地の選定手続き・経緯 ====== ====== 4.1  処分地の選定手続き・経緯 ======
  
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 +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
   * フィンランドでは1983年から、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に向けた調査がスタートしました。サイト調査が段階的に進む途中から、建設許可申請の審査ステップよりも早い時期に、重要な原子力施設について、その建設が社会全体の利益に合致するという判断を政府が決定するステップが法制化されました。地元自治体の受け入れ意思の存在がなければ、政府は最終処分場の計画を承認できません。こうした法制度のもとで、2001年に**エウラヨキ自治体のオルキルオト**が最終処分地に決定しています。   * フィンランドでは1983年から、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に向けた調査がスタートしました。サイト調査が段階的に進む途中から、建設許可申請の審査ステップよりも早い時期に、重要な原子力施設について、その建設が社会全体の利益に合致するという判断を政府が決定するステップが法制化されました。地元自治体の受け入れ意思の存在がなければ、政府は最終処分場の計画を承認できません。こうした法制度のもとで、2001年に**エウラヨキ自治体のオルキルオト**が最終処分地に決定しています。
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 ===== 処分地選定の進め方 ===== ===== 処分地選定の進め方 =====
  
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 **[1] 1983年の原則決定** \\ 1983年の政府の原則決定では、使用済燃料の管理に関する政府の考え方について、原子力発電事業者が外国に再処理を委託し、かつ再処理で発生する放射性廃棄物がフィンランドに返還されない形で再処理契約を締結する方向で交渉すべきとする方針が述べられていました。しかし、こうした再処理契約が実現しない可能性に備えて、使用済燃料を原子炉から取り出してから40年後(2020年)に処分開始できるような目標を定めています。 **[1] 1983年の原則決定** \\ 1983年の政府の原則決定では、使用済燃料の管理に関する政府の考え方について、原子力発電事業者が外国に再処理を委託し、かつ再処理で発生する放射性廃棄物がフィンランドに返還されない形で再処理契約を締結する方向で交渉すべきとする方針が述べられていました。しかし、こうした再処理契約が実現しない可能性に備えて、使用済燃料を原子炉から取り出してから40年後(2020年)に処分開始できるような目標を定めています。
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 |  ③|詳細サイト特性調査(1993~2000年)  | |  ③|詳細サイト特性調査(1993~2000年)  |
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 ==== 原則決定手続き ==== ==== 原則決定手続き ====
  
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-{{:hlw:fi:process-dip.png?340&nodirect|原則決定手続き}}\\+{{:hlw:fi:process-dip.png?320&nodirect|原則決定手続き}}\\
 <fc #080>原子力法における原子力施設導入計画の承認プロセス\\ (**原則決定手続き**)</fc> <fc #080>原子力法における原子力施設導入計画の承認プロセス\\ (**原則決定手続き**)</fc>
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 ==== 環境影響評価(EIA)手続き ==== ==== 環境影響評価(EIA)手続き ====
  
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-{{:hlw:fi:process-eia.png?340&nodirect|環境影響評価(EIA)手続きの概要}}\\+{{:hlw:fi:process-eia.png?320&nodirect|環境影響評価(EIA)手続きの概要}}\\
 <fc #080>環境影響評価(EIA)手続きの概要</fc> <fc #080>環境影響評価(EIA)手続きの概要</fc>
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 ===== 処分地選定までの経緯 ===== ===== 処分地選定までの経緯 =====
  
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 <fc #080>フィンランドの処分事業の経緯</fc>\\ <fc #080>フィンランドの処分事業の経緯</fc>\\
-{{:hlw:fi:timeplan-fi.png?340&nolink|フィンランドの処分事業の経緯}}+{{:hlw:fi:timeplan-fi.png?320&nolink|フィンランドの処分事業の経緯}}
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 サイト調査の当初(サイト確定調査と概略サイト特性調査)は、オルキルオト原子力発電所を所有するTVO社が実施しました。1994年の原子力法改正による使用済燃料の輸出入禁止以降は、原子力発電事業者2社が設立したポシヴァ社がサイト調査を継承しました。 サイト調査の当初(サイト確定調査と概略サイト特性調査)は、オルキルオト原子力発電所を所有するTVO社が実施しました。1994年の原子力法改正による使用済燃料の輸出入禁止以降は、原子力発電事業者2社が設立したポシヴァ社がサイト調査を継承しました。
  
-1983年からのサイト確定調査では、文献等にる調査102カ所が識別されました。そのうち5カ所で地表からのボーリング等による概略サイト特性調査が行われました。その後、より適した場所と考えられたカ所で、ポシヴァ社が詳細サイト特性調査を行いました。これらのカ所では、最終処分場の地上施設と地下施設を建設・操業する場合の環境影響評価も実施しました。+1983年からのサイト確定調査では、、大規模な亀裂帯を回避し、安定な基盤岩ブロックを選定するために、最初に航空写真や地形図等の文献調査が行われ、フィンランド全土から100~200km<sup>2</sup>の大きさからなる327カ所の目標地域が選定されました。 
 +次に、基盤岩の大きさや地形の地質学的要因や、人口密度・使用済燃料の輸送等の環境要因関す文献調査により目標地域の絞込みが行われ、5~10km<sup>2</sup>の大きさからなる102カ所の調査地域選定されました。 
 +その後、調査に対して自治体から同意を得る等のプロセスを経て、最終的に5カ所で地表からのボーリング等による概略サイト特性調査が行われました。その後、より適した場所と考えられた4カ所で、ポシヴァ社が詳細サイト特性調査を行いました。これらの4カ所では、最終処分場の地上施設と地下施設を建設・操業する場合の環境影響評価も実施しました。
  
-ポシヴァ社は、1999年3月に、カ所の候補地点について使用済燃料の処分を行った場合の長期安全性に関する報告書『ハーシュトホルメン、キヴェッティ、オルキルオト、ロムヴァーラにおける使用済燃料処分の安全評価』(TILA-99)をまとめました。その結果からポシヴァ社は、エウラヨキ自治体のオルキルオトを選定し、原子力法で定められた原則決定手続きに基づく申請を1999年5月に行いました。+ 
 +ポシヴァ社は、1999年3月に、4カ所の候補地点について使用済燃料の処分を行った場合の長期安全性に関する報告書『ハーシュトホルメン、キヴェッティ、オルキルオト、ロムヴァーラにおける使用済燃料処分の安全評価』(TILA-99)をまとめました。その結果からポシヴァ社は、エウラヨキ自治体のオルキルオトを選定し、原子力法で定められた原則決定手続きに基づく申請を1999年5月に行いました。
  
 STUKはTILA-99を評価し、2000年1月12日に肯定的な見解書を政府に提出しました。その見解書を見た上で、エウラヨキ自治体は2000年1月24日に議会で投票を行い(賛成20/反対7)、最終処分場の受け入れ意思を表明することを決定しました。これらの結果を受けて、政府は2000年12月に原則決定を行い、その決定内容を国会が2001年5月に承認しました(賛成159/反対3)。これにより、エウラヨキ自治体のオルキルオトが最終処分地に決定しました。フィンランドは、世界で最初に高レベル放射性廃棄物の処分地が決定した国です。 STUKはTILA-99を評価し、2000年1月12日に肯定的な見解書を政府に提出しました。その見解書を見た上で、エウラヨキ自治体は2000年1月24日に議会で投票を行い(賛成20/反対7)、最終処分場の受け入れ意思を表明することを決定しました。これらの結果を受けて、政府は2000年12月に原則決定を行い、その決定内容を国会が2001年5月に承認しました(賛成159/反対3)。これにより、エウラヨキ自治体のオルキルオトが最終処分地に決定しました。フィンランドは、世界で最初に高レベル放射性廃棄物の処分地が決定した国です。
  
-「原則決定手続き」という原子力施設導入計画の承認する制度では、国会において政府の原則決定が承認されるまでは、大規模な地下掘削が禁止されています。このため、わが国のサイト選定プロセスでは精密調査段階で実施される調査は、フィンランドでは最終処分地が決定した後に実施することになっているのが特徴です。オルキルオトでは、2004年6月から地下特性調査施設(ONKALO)の建設が開始されてい+「原則決定手続き」という原子力施設導入計画の承認する制度では、国会において政府の原則決定が承認されるまでは、大規模な地下掘削が禁止されています。このため、わが国のサイト選定プロセスでは精密調査段階で実施される調査は、フィンランドでは最終処分地が決定した後に実施することになっているのが特徴です。オルキルオトでは、2004年6月から地下特性調査施設(ONKALO)の建設が開始されました
  
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 ====== 4.2  地域振興方策 ====== ====== 4.2  地域振興方策 ======
  
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 +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
   * 実施主体のポシヴァ社は、処分場の立地による経済メリットを明らかにしています。また地元自治体は、税制において固定資産税率のアップを通じて財政的優遇措置が受けられるようになっています。さらにポシヴァ社との間で協力協定を締結しています。   * 実施主体のポシヴァ社は、処分場の立地による経済メリットを明らかにしています。また地元自治体は、税制において固定資産税率のアップを通じて財政的優遇措置が受けられるようになっています。さらにポシヴァ社との間で協力協定を締結しています。
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 ===== 社会経済的影響評価 ===== ===== 社会経済的影響評価 =====
  
-<WRAP rss right 350px> +[45%{{ :hlw:fi:eia1999-socio-economical.png|社会経済面への影響に関する評価項目|
-<fc #080>処分場立地による社会経済面への影響に関する評価項目</fc> +
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 <fs 70%>source: Posiva, EIA Report 1999</fs> <fs 70%>source: Posiva, EIA Report 1999</fs>
 +}}]
  
-\\ +ポシヴァ社は、最終処分地決定の判断資料として1999年に作成した環境影響評価(EIA)報告書において、4つの候補地の自治体のそれぞれに対する処分場の立地が社会経済面に及ぼす影響の評価を、の表にある項目に対して行いました。
- +
-<fc #080>処分場立地による雇用の増加の予測(最大値)</fc>\\ +
-{{:hlw:fi:eia1999-employment.png?340&nolink|雇用の増加の予測}}\\ +
-<fs 70%>Posiva, EIA Report 1999掲載値から作成</fs> +
-</WRAP> +
- +
- +
-ポシヴァ社は、最終処分地決定の判断資料として1999年に作成した環境影響評価(EIA)報告書において、4つの候補地の自治体のそれぞれに対する処分場の立地が社会経済面に及ぼす影響の評価を、本ページの表にある項目に対して行いました。+
  
 このうち地域構造への影響に対する評価結果では、どの自治体においても、農業・観光業・不動産価値に対して特にマイナスの影響が出ることはないと評価されています。むしろ、どの自治体でも雇用の創出、人口増加を始めとする経済効果などが生じると見込まれています。 このうち地域構造への影響に対する評価結果では、どの自治体においても、農業・観光業・不動産価値に対して特にマイナスの影響が出ることはないと評価されています。むしろ、どの自治体でも雇用の創出、人口増加を始めとする経済効果などが生じると見込まれています。
  
 +[45%{{ :hlw:fi:eia1999-employment.png|雇用の増加の予測|
 +<fc #080>処分場立地による雇用の増加の予測(最大値)</fc>  
 +<fs 70%>source: Posiva, EIA Report 1999</fs>
 +}}]
  
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 \\ \\
 ===== 制度的な財政面の優遇措置 ===== ===== 制度的な財政面の優遇措置 =====
  
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 <fc #080>処分場立地優遇措置による固定資産税の税収増予測</fc>\\ <fc #080>処分場立地優遇措置による固定資産税の税収増予測</fc>\\
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 + 
 +フィンランドにおいて、処分場等の原子力施設の立地に関連する自治体に対して制度的に経済的便宜供与が行われるものは、税制における固定資産税の優遇措置のみです。
  
-フィンランドにおいて、処分場等の原子力施設の立地に関連する自治体に対して制度的に経済的便宜供与が行われるものは、税制における固定資産税の優遇措置のみです。地元自治体は通常の固定資産税率を0.5%から1.0%の間で任意に定めることができますが、原子力発電所や放射性廃棄物管理施設については、その上限が2.5%(1999年当時、2010年からは2.85%)まで引き上げられており、地元自治体にとって固定資産税の増収が可能となっています。+地元自治体は通常の固定資産税率を0.5%から1.0%の間で任意に定めることができますが、原子力発電所や放射性廃棄物管理施設については、その上限が2.2%(1999年当時)まで引き上げられていました。このため、地元自治体にとっては、処分場の立地による固定資産税の増収を見込むことできます。固定資産税率の上限は、税制関連法令の改正につれて引き上げられており、2016年以降では3.1%となっています。
  
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 \\ \\
 ===== 地元との協定による措置 ===== ===== 地元との協定による措置 =====
  
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-{{:hlw:fi:vuojokimansion.jpg?340&nolink|ポシヴァ社の社屋}}+
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行 203: 行 202:
   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/fi/chap4.1386678048.txt.gz · 最終更新: 2013/12/10 21:20 by sahara.satoshi