諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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-~~ShortTitle:3.処分事業に係わる制度/実施体制~~+~~ShortTitle:3.実施体制と資金確保~~
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 ==HLW:FI:chap3== ==HLW:FI:chap3==
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
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 {{anchor:chap3}} {{anchor:chap3}}
-====== 3. 処分事業に係わる制度/実施体制 ======+====== 3. 処分事業実施体制と資金確保 ======
  
 {{anchor:b1}} {{anchor:b1}}
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 ===== 実施体制の枠組み ===== ===== 実施体制の枠組み =====
  
-<WRAP rss right 320px> +[40%{{ :hlw:fi:organisation-fi.png?320|処分の実施体制| 
-{{:hlw:fi:organisation-fi.png?320&nodirect|処分の実施体制}}\\ +<fc #080>処分の実施体制</fc> 
-<fc #080>処分の実施体制</fc>\\ +}}]
-</WRAP>+
  
 フィンランドでは放射性廃棄物管理分野における責任体制は原子力法で定められており、全般的な権限は国のエネルギー政策を作成する責任が課されている雇用経済省にあります。雇用経済省は、放射性廃棄物の管理義務要件を策定する上で、政府が意思決定するための準備も行っています。政府は、処分目標(サイト選定の段階と目標時期)の原則決定と一般安全規則の策定を行うほか、処分場の建設・操業の許可発給を行います。 フィンランドでは放射性廃棄物管理分野における責任体制は原子力法で定められており、全般的な権限は国のエネルギー政策を作成する責任が課されている雇用経済省にあります。雇用経済省は、放射性廃棄物の管理義務要件を策定する上で、政府が意思決定するための準備も行っています。政府は、処分目標(サイト選定の段階と目標時期)の原則決定と一般安全規則の策定を行うほか、処分場の建設・操業の許可発給を行います。
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-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
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 ===== 実施主体 ===== ===== 実施主体 =====
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-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
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 ===== 安全規則 ===== ===== 安全規則 =====
  
-<WRAP rss right 320px> +フィンランドの原子力施設に関する安全規制文書体系は、①原子力法、②原子力令、③規則(一般安全規則)、④詳細安全規則、4段階の構成となっています。使用済燃料の処分に関する一般安全規則は、当初は1999年に定められましたが、その後二度の改訂を経て、現在は「原子力廃棄物の処分の安全性に関する放射線・原子力安全センター(STUK)規則」として定められています。一般安全規則と詳細安全規則を定める権限は、安全規制機関の放射線・原子力安全センター(STUK)にあります。
-{{:hlw:fi:regulatory-pyramid-fi.png?250&nolink|フィンランドの規制文書体系}}\\ +
-<fc #080>フィンランドの規制文書体系</fc> +
-</WRAP>+
  
-フィンランドの原子力施設に関する安全規制の文書体系は、①原子力法令、②政令(一般安全規則)、③詳細安全規則、の3段階の構成となっています。使用済燃料の処分に関する一般安全規則は、当初は1999年に定められましたが、その後2008年に「原子力廃棄物の最終処分における安全性に関する政令」として改訂されました。詳細安全規則を定める権限は、安全規制機関の放射線・原子力安全センター(STUK)にあります。 
  
- +<WRAP clear/>
-<WRAP clear></WRAP>+
  
  
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 |- |-
 |style="padding-left:1.5em;" |・放射性核種別の環境に放出される1年間あたりの量 |style="padding-left:1.5em;" |・放射性核種別の環境に放出される1年間あたりの量
-|style="text-indent:0;" |個別の規制値以下で、かつ各核種の放出量/規制値の比率の合計が1未満+|style="text-indent:0;" |個別の規制値以下で、かつ各核種の放出量/規制値の比率の合計が1以下
 |} |}
  
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 {{anchor:b2}} {{anchor:b2}}
 +====== 3.2 処分費用の確保 ======
 +
 +<WRAP round box>
 +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
 +  * 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、原子力施設許可取得者(電力会社)が負担しています。処分費用は、雇用経済省が所管する**国家放射性廃棄物管理基金(VYR)**に積み立てられています。基金に積み立てられる費用には、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯蔵費用と輸送費用、さらにその他の放射性廃棄物の処理・中間貯蔵・輸送・処分費用、及び原子炉施設の廃止措置費用等も含まれています。
 +</WRAP>
 +<WRAP clear/>
 +
 +===== 処分費用の負担者 =====
 +
 +<WRAP rss right 320px>
 +{{:hlw:fi:financing-system-fi.png?320&nolink|フィンランドにおける資金確保の仕組み}}\\
 +<fc #080>フィンランドにおける資金確保の仕組み</fc>
 +</WRAP>
 +
 +
 +フィンランドの原子力法では、原子力施設の許可取得者が放射性廃棄物の処分や貯蔵等を含めた管理全般の費用を負担する責任を有することを規定しています。ここで対象となる費用は、最終処分場の建設・操業のほかに、研究開発や輸送、貯蔵等を含めた放射性廃棄物管理全般に係る費用です。原子炉施設許可取得者である電力会社テオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)は、3年毎に提出する放射性廃棄物管理計画と併せて、その実施に必要な費用見積の提出も義務づけられています。
 +
 +<WRAP clear/>
 +\\
 +===== 処分費用の確保制度 =====
 +
 +<WRAP rss right 320px>
 +{{:hlw:fi:vyr-fund-development.png?320&nodirect|国家放射性廃棄物管理基金の積立の状況}}\\
 +<fc #080>国家放射性廃棄物管理基金の積立の状況</fc>
 +
 +
 +\\ \\
 +<fc #080>国家放射性廃棄物管理基金の積立残高(2015年)</fc>
 +^   支払者  ^  基金残高  ^
 +|TVO社 \\ (オルキルオト原子力発電所)  |     13.6億ユーロ\\ (1,550億円)|
 +|FPH社 \\ (ロヴィーサ原子力発電所)         10.8億ユーロ\\ (1,230億円)|
 +|その他(研究炉をもつVTT)                    |   979万ユーロ\\  (11.2億円)|
 +|合計      |  25.4億ユーロ\\  (約2,900億円)|
 +
 +<fs 90%>1ユーロ=114円で換算。四捨五入のため合計は合わない</fs>\\
 +</WRAP>
 +
 +
 +放射性廃棄物管理費用は、雇用経済省が所管する**<abbr>国家放射性廃棄物管理基金 [Valtion ydinjätehuoltorahasto]</abbr>**に積み立てられています。この基金に積み立てを行う主な廃棄物発生者はTVO社とFPH社です。
 +
 +基金の積立対象となるのは、高レベル放射性廃棄物の処分費用のほか、中間貯蔵費用と輸送費用、さらにその他の放射性廃棄物の処理・中間貯蔵・輸送・処分費用、及び原子炉施設の廃止措置費用等も含まれています。
 +
 +フィンランドの特徴は、その時点までに発生した放射性廃棄物の量(原子力施設の解体廃棄物については発生したとみなされる量)を処理・中間貯蔵・輸送・処分する費用を、その時点の見積額で評価する点です。
 +
 +雇用経済省は、TVO社とFPH社から提出された費用見積額を精査した上で、債務評価額(各社が最終的に負担すべき金額)と積立目標額を決定します。積立目標額は、廃棄物の発生量に比例しない固定費部分を長期の分割払いとして調整した金額です。各廃棄物発生者は、この積立目標額を毎年3月末までに国家放射性廃棄物管理基金に払い込みます。また、積立目標額と債務評価額の差額分については、国に対して担保の提供が義務付けられています。
 +
 +積み立てられた費用の運用にも特徴があり、積み立てた電力会社は積立残高の最大75%までの貸付を受けることが可能です。
 +
 +
 +<WRAP clear/>
 +===== 処分費用の見積もり =====
 +
 +<WRAP rss right 320px>
 +{{:hlw:fi:cost-breakdown-fi.png?230&nolink|処分費用の見積額内訳}}\\
 +<fc #080>処分費用の見積額内訳(百万ユーロ)</fc>\\ 
 +<fs 90%>※ 5,500トン(ウラン換算)処分の場合</fs>\\
 +<fs 70%>source: Posiva</fs>
 +
 +</WRAP>
 +
 +
 +フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物の処分実施主体であるポシヴァ社は処分費用について定期的に見積もりを行っています。
 +2010 年時点での処分費用の総額は、約33.2億ユーロ(約3,780億円)と見積られています。この見積額は発電所の稼働年数等を基に5,500トンの処分量を前提とした金額です。
 +内訳は、地下特性調査施設(ONKALO)を含めた建設費などの投資費用が約7億ユーロ(約800億円)、操業費が約24.2億ユーロ(約2,760億円)、処分場の閉鎖・廃止措置費用が約2億ユーロ(約230億円)となっています。(1 ユーロ=114円として換算)
 +
 +<WRAP clear/>
 +\\
 +=== 処分費用として対象となるもの ===
 +
 +高レベル放射性廃棄物の処分費用は、放射性廃棄物管理全般の枠組みの中で見積られています。高レベル放射性廃棄物の処分費用の算定は、実施主体のポシヴァ社が行っています。ポシヴァ社の費用見積を受けて、TVO社とFPH社は、高レベル放射性廃棄物の処分費用以外の中間貯蔵、輸送費用、及び中低レベルの放射性廃棄物の処理、中間貯蔵、輸送、処分費用、さらに原子炉施設の廃止措置費用等を含む全ての必要な費用を見積った上で、雇用経済省に提出します。
 +
 +なお原子力法に基づき、これらの費用の見積に当たっては、将来の不確定条件も多く含まれることから、予備費(コンティンジェンシー:不測の費用増に備えた上乗せ分)として20%が含まれています。
 +
 +
 +<WRAP clear/>
 +\\
 +====== ======
 +\\
 +<WRAP note>
 +<wrap lo>備考:通貨換算には、[[http://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju1612.htm/|日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート]](平成28年12月中において適用)を使用しています。</wrap>
 +  * <wrap lo>1ユーロ=114円として換算</wrap>
 +</WRAP>
 +
 +
 +
 +/* ##################################################################################################
 +
 ====== 3.2 処分に関わる法制度 ====== ====== 3.2 処分に関わる法制度 ======
  
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 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 安全規制 ===== ===== 安全規制 =====
行 152: 行 233:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 資金確保 ===== ===== 資金確保 =====
行 165: 行 246:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 環境 ===== ===== 環境 =====
行 178: 行 259:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
 ===== 原子力責任 ===== ===== 原子力責任 =====
行 190: 行 271:
 </WRAP> </WRAP>
  
-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/> 
 +################################################################################################## */ 
  
 \\ \\
行 213: 行 296:
   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs>
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+
 </WRAP> </WRAP>
  
hlw/fi/chap3.1445229611.txt.gz · 最終更新: 2015/10/19 13:40 by 127.0.0.1