諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:de:chap6

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hlw:de:chap6 [2014/01/07 13:22] – [連邦政府主導の対話活動「ゴアレーベン・ダイアログ」(2010年~)] sahara.satoshihlw:de:chap6 [2017/05/23 19:31] (現在) – 外部編集 127.0.0.1
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-~~bc:6.安全確保の取り組み・コミュニケーション~~+~~ShortTitle:6.安全確保の取り組み~~
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs> 
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み]]</fs>
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-====== 6. 安全確保の取り組み・コミュニケーション ======+====== 6. 安全確保の取り組み ======
  
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-====== 6.1 地層処分の安全確保の取り組み ====== 
  
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   * ドイツでは、ゴアレーベンでの高レベル放射性廃棄物処分を想定して、処分概念の検討と共に、同サイトの処分場としての適性を確認する適合性調査や安全評価などが行われてきました。   * ドイツでは、ゴアレーベンでの高レベル放射性廃棄物処分を想定して、処分概念の検討と共に、同サイトの処分場としての適性を確認する適合性調査や安全評価などが行われてきました。
-  * 2009年には「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」が策定され、ゴアレーベンへの適用に向け検討が行われていましたが、2013年にサイト選定法が制定されたことを受けこれらの安全要件も含めて再検討することになっています。+  * 2013 年に定されたサイト選定法では3段階かなるサイト選定手続き各段階において予備的安全評価を行い、安全性の確認が行われることになっています。
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 1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。 1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。
  
-ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。探査活動は2010年11月に再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って探査活動は中止することになりました。+ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。2010年11月に探査活動は再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って終了することになりました。
  
-連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。+連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現BMUB 旧称)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。
  
 2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。 2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。
  
-ドイツでは今後、サイト選定法に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会設置され、2015末を目途とて処分の安全要件や複数サイトの比較を前提としたサイト選定基準、選定手続を検討していくことています。+ドイツでは2013 年7月にサイト選定法が制定され、今後同法に基づき、サイト選定が行われることになっています。サイト選定法に規定された選定手続きでは、3段階からなる手続きの各段階において予備的安全評価を行い、安全性の確認が行われることになっています。また、サイト選定法に基づき設置された高レベル放射性廃棄物処分委員会が20167月に提出た最終報告書では、安全評価のため安全基準を含む安全要件についてはサイト選定法に組み込むべきことなどが勧告されています。今後、この勧告に基づき、安全要件の改定など必要な法整備が 
 +行われます。
  
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-====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ====== +
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-  * ドイツでは、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)やドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)は、地元自治体等とのさまざまなコミュニケーションを図ってきました。管轄官庁の連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、2010年秋に再開されたゴアレーベンでの探査活動に関して、情報提供や住民との対話集会を行っています。 +
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-===== 情報を提供し、意見を受けるための制度 ===== +
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-{{:hlw:de:eia-de.png?300&nodirect|ドイツにおける環境適合性審査の流れ}}\\ +
-<fc #080>ドイツにおける環境適合性審査の流れ</fc> +
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-原子力法では、放射性廃棄物の処分場の建設に当たって、計画確定の手続きを行うことが必要となっており、この手続きの中で、環境適合性審査を行うことになっています。 +
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-この審査では、最初に許可申請者が処分事業の全般的な目的を通知し、環境影響評価の調査予定範囲を許認可当局と共に確認するプロセスが行われます。その結果をもとに、許可申請者が環境影響評価計画書を作成します。この計画書は、処分事業の概要を記述した概要資料を含めて公告・縦覧されます。そして国民は2カ月の間に異議の申立てをすることができ、申立てがなされた場合には公聴会が開催されます。 +
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-寄せられた意見を反映する形で、許可申請者が環境影響評価書を作成することになるとともに、許認可当局も意見の反映度を勘案した形で承認の判断ができるようになっています。 +
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-ただし、こうした制度に基づく形での情報の提供や地元住民の意見表明などの機会は、計画確定の手続きを開始する段階に至っていないため、現時点では行われていません。 +
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-==== サイト選定手続委員会(AkEnd)における市民参加の試行(1999~2001年) ==== +
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-{{:hlw:de:akend-workshop-photo1.png?200&nolink|AkEndのワークショップの開催模様(1)}} +
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-{{ :hlw:de:akend-workshop-photo2.png?200&nolink|AkEndのワークショップの開催模様(2)}} +
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-<fc #080>AkEndのワークショップの開催模様</fc>\\ +
-<fs 70%>source:<nowiki>www.akend.de</nowiki></fs> +
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-1999年に連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)の下に設けられたサイト選定手続委員会(AkEnd)では、サイト選定手続きのあり方に関する検討が行われました。AkEndはワークショップなどの形式を採用して社会との接点を重視する形で検討作業を進め、2002年に取りまとめた最終報告書において、サイト選定の各段階において市民の参加を得ることが重要性を指摘しました。しかし当時は、AkEndが提案したサイト選定の新たな制度や枠組みの策定に結びつかず、市民との接点を重視した手続の導入は実現しませんでした。 +
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-===== 過去のコミュニケーション活動(ゴアレーベン) ===== +
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-{{:hlw:de:gorleben-dialog-web.png?300&nolink|www.gorlebendialog.de}}\\ +
-<fc #080>ゴアレーベン・ダイアログのウェブサイト</fc>\\ +
-<fs 90%>(探査中止に伴い、現在は提供中止となっています)</fs>\\ +
-<fs 70%>source: //<nowiki>www.gorlebendialog.de</nowiki>//</fs> +
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-2013年のサイト選定法により探査活動が中止されるまで、処分場候補地として探査が続けられてきたゴアレーベン地域では、監督機関である連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現在の連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省)や、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が対話活動や情報提供を行ってきました。 +
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-ゴアレーベンには1979年から情報センターが設けられていました。また、地元及び周辺自治体の議員で構成するゴアレーベン委員会が、実施主体のBfSや、BfSの委託を受けて現地の探査活動を実施していたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)とのコミュニケーションのチャンネルの役割を果たしていました。 +
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-2010年にゴアレーベンの探査凍結が解除された際、BMUは探査活動を進める上で地元のステークホルダーや住民の参加プロセスの導入が重要との認識を示しています。BMUは同年、市民との対話活動「ゴアレーベン・ダイアログ」を開始しました。この対話活動では、探査活動や予備的安全評価について、専用のウェブサイトを設けて情報提供や意見募集を行ったほか、市民との対話集会などが開催されました。しかし、サイト選定の見直しに伴いゴアレーベンの探査が中止されたため、現在はこうした対話活動も中断されています。 +
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-==== ゴアレーベン地域でのコミュニケーション活動 ==== +
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-ゴアレーベンへの核燃料サイクル・バックエンドセンターの誘致は、地元のニーダーザクセン州政府が連邦政府に提案する形で実現しています。1979年には、当時の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)とニーダーザクセン州との間での合意のもと、全ての情報を公開すべきとの求めに応じて、PTBはサイトの近郊に情報センターを設置しました。また同州は、地元及び周辺自治体等の議員が委員となるゴアレーベン委員会を設置し、PTBから報告や情報提供を受けるチャンネルとしました。この委員会は、地元への情報提供、コミュニケーション、PTBとの信頼関係構築に大きな役割を果たしたとされています。 +
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-こうした取組みは、1989年に処分実施主体が連邦放射線防護庁(BfS)に代わってからも継続して行われ、ゴアレーベン委員会、ゴアレーベン・フォーラム等のさまざまな地域情報サークル、現地の探査活動の中心となっているドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)との間で、コミュニケーションが図られてきています。 +
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-====== 6.3 意識把握と情報提供 ====== +
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-  * ドイツでは2013年4月にサイト選定法案が閣議決定された後、同年5月31日から3日間にわたり、法案について説明し議論する「市民フォーラム」がベルリンで開催されました。会場での議論に加え、インターネットを通じた意見聴取も実施されました。 +
-  * サイト選定の見直し前は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)やBfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)がゴアレーベンに関する広報活動を実施していました。 +
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-===== サイト選定法に関する市民フォーラム ===== +
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-ドイツでは2013年4月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)の法案が閣議決定された後、同年5月31日から6月2日の3日間にわたり、「サイト選定法に関する市民フォーラム」がベルリンで開催されました。 +
-このフォーラムでは連邦議会に所属する各政党の議員や処分事業関連の専門家らが出席し、公衆参加などの社会的側面から資金・技術面などサイト選定法案で扱われている多くの側面について説明し、市民と議論を交わしました。 +
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-フォーラムの模様は全てインターネットで同時中継され、録画画像は動画投稿サイトを通じて公開されています。会場での議論に加え、インターネットを通じた市民からの意見聴取も実施されました。 +
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-===== ゴアレーベンにおける広報活動(情報提供) ===== +
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-{{:hlw:de:display-trailer.png?300&nolink|移動展示車両を用いた展示}}\\ +
-<fc #080>移動展示車両を用いた展示</fc>\\ +
-<fs 70%>source: BfS</fs> +
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-ゴアレーベンでの探査が中止される以前は、処分の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が主に一般市民向け、BfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が主にサイト周辺住民向けの広報活動を実施していました。 +
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-プレスリリースや情報冊子、講演会の開催や見本市への出展に加え、ゴアレーベンには情報センターが設けられ、地下探査坑道の見学を組み込んだサイトツアーが実施されていました。2009年からは、移動展示車両で各地を巡回する情報提供活動も実施されました。 +
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-{{:wiki:images:ch_w16.png?nolink|ドイツ}}<select ドイツ…>+{{:wiki:images:de_w16.png?nolink|ドイツ}}<select ドイツ…>
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   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>   *<fs 90%>1. [[prologue|高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針]]</fs>
   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>   *<fs 90%>2. [[chap2|地層処分計画と技術開発]]</fs>
-  *<fs 90%>3. [[chap3|処分事業に係わる制度/実施体制]]</fs>+  *<fs 90%>3. [[chap3|実施体制と資金確保]]</fs>
   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>   *<fs 90%>4. [[chap4|処分地選定の進め方と地域振興]]</fs>
-  *<fs 90%>5. [[chap5|処分事業の資金確保]]</fs> +  *<fs 90%>5. [[chap5|情報提供・コミュニケーション]]</fs> 
-  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み・コミュニケーション]]</fs>+  *<fs 90%>6. [[chap6|安全確保の取り組み]]</fs>
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hlw/de/chap6.1389068562.txt.gz · 最終更新: 2014/01/07 13:22 by sahara.satoshi