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諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の状況(あらまし)

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スイス スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分

スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


1. 高レベル放射性廃棄物の発生状況と処分方針

ポイント

  • 高レベル放射性廃棄物を含む全ての放射性廃棄物を、長期安全性と回収可能性を融合させた「監視付き長期地層処分」の概念に基づいて設計する処分場で処分することを法律で定めています。


原子力エネルギー政策の動向

[1] 連邦評議会とは?
連邦の行政府で、日本の内閣に相当します。連邦参事会とも呼ばれており、7人の閣僚から構成され、合議制をとります。連邦評議会の閣僚は連邦議会により選出され、任期は4年です。大統領には首席閣僚が就任し、輪番制により1年毎に交代します。議会による連邦評議会の不信任、連邦評議会による議会の解散などはありません。

全国4カ所の原子力発電所に建設された5基の原子炉は、1969年から1984年にかけて運転を開始しました。その内訳は沸騰水型原子炉(BWR)が2基、加圧水型原子炉(PWR)が3基です。2003年に制定された原子力法(2005年2月施行)は、新規原子炉の導入凍結を解除するとともに、原子炉の運転期限の制限を撤廃していました。しかし、2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故後の2011年5月に連邦評議会[1]は「エネルギー戦略2050」を閣議決定し、既設5基が営業運転を終了した以降はリプレースせず、段階的に原子力発電から撤退する方針に転換しました。連邦議会は2012年12月に原子炉の新設を禁止する動議を可決しています。政府は同戦略に基づくエネルギー構造改革に向けた法案を2013年9月に連邦議会へ提出し、2016年9月に連邦議会で採択されました。法律の発効は2018年初頭と見込まれています。

使用済燃料の発生と貯蔵(処分前管理)

ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)
ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)
zentrale zwischenlager fur radioaktive Abfalle in Wurenlingen

スイスでは、原子力発電から発生する使用済燃料は、各発電会社が個別に外国(フランスと英国)の会社と委託契約を結ぶことにより、再処理を実施してきました。しかし、原子力法により、2006年7月以降10年間にわたり再処理を目的とした使用済燃料の輸出を禁止しました。連邦決議により、この禁止期間が2016年7月からさらに4年延長されました。このため現在は、燃料プールで使用済燃料を数年間冷却した後、所内または所外の中間貯蔵施設で中間貯蔵しています。

発電所外の中間貯蔵施設には、原子力発電所を保有する4社が共同出資して建設したヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL、2001年操業開始)があります。この施設では、使用済燃料(乾式キャスク貯蔵)のほか、外国での再処理に伴って返還されるガラス固化体や他の放射性廃棄物を貯蔵しています。

2カ所の原子力発電所(ベツナウとゲスゲン)には所内に中間貯蔵施設があり、いずれも2008年から使用済燃料の貯蔵を開始しました。ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)は乾式キャスクを用いた貯蔵方式であり、ゲスゲン原子力発電所の施設は湿式プール方式です。

2013年12月末時点で、スイス国内の使用済燃料貯蔵量は約1,237トン(ウラン換算、以下同じ)です。外国との新規再処理委託契約が凍結されるまでに、フランスと英国に約1,139トンの使用済燃料が搬出されており、ガラス固化体の形で114m3が返還される見込みです。このうち、2013年12月時点で55m3が返還済みであり、ZZLで貯蔵されています。


処分方針

[2] 放射性廃棄物の管理義務の履行
原子力法は、次のいずれかが満たされた場合、放射性廃棄物の管理義務が履行されたものとすると規定しています。

  • 廃棄物が地層処分場に搬入され、モニタリング期間と将来の閉鎖のための資金が確保されている。
  • 廃棄物が外国の放射性廃棄物管理施設に搬入されている。

スイスでは原子力法及び連邦決議において、再処理目的の使用済燃料の輸出を2020年6月末まで禁じています。現時点では将来に再処理を行うオプションが残されているので、使用済燃料は“直接処分する高レベル放射性廃棄物”と決まった訳ではありません。2005年施行の原子力令では、再利用しない使用済燃料を“高レベル放射性廃棄物”と定めています。

スイスでは、放射性廃棄物を国内で処分する場合には地層処分を行う方針です。ただし、法的には、国際共同処分場での処分も可能としています[2]。

地層処分場の構成要素として、主となる処分施設とは別に、少量の代表的な放射性廃棄物を収納して一定期間にわたりモニタリングする「パイロット施設」の設置を原子力令で定めている点が特徴的です。このような処分概念は「監視付き長期地層処分」と呼ばれています。

EKRAが比較検討した処分概念
EKRAが比較検討を行った処分概念
source: EKRA, Entsorgungskonzepte für radioaktive Abfälle, Schlussbericht (2000)


処分方針が決定するまでの経緯

スイスでは、1978年に連邦議会で行われた「原子力法に関する連邦決議」により、原子力施設の建設許可及び運転許可の前提条件として、施設を建設しようとする者に対して、連邦評議会(内閣に相当)が発給する概要承認の取得が義務付けられました。既存の原子力発電所の運転の継続や新規発電所の認可条件として、放射性廃棄物が確実に処分可能であることが条件とされました。

この「処分の実現可能性の実証」に向けて、連邦政府は1985年を期限として、実際の地質条件に基づいた、地層処分の実現可能性を評価する「保証プロジェクト」の実施をNAGRAに求めました。このプロジェクトではスイス北部の結晶質岩に注目して検討が進められました。このプロジェクト報告書を受けて、1988年に連邦評議会が示した評価では、地層処分場の建設可能性や安全性は確認されたものの、必要な大きさを備えた母岩を見つけ出せるかどうかについては立証できていないとし、堆積岩も調査対象とすることを要求しました。

NAGRAは、既存の地質情報に基づきスイス全土から絞り込む形で粘土質を多く含む岩種に着目し、現地調査を行う第一優先区域として、1994年にはチューリッヒ州北部を選定しました。連邦当局の承認を得て、選定区域での3次元反射法地震探査を行うとともに、1998年からは同区域にあるベンケンという場所でボーリング調査も行われました。

[3] EKRAの勧告
2000年のEKRAの報告書の主な勧告は、次の通りです。

  • 放射性廃棄物の管理に関する公衆の議論を奨励すべきである。
  • 全ての放射性廃棄物の処分概念として、地層処分を原子力法で規定すべきである。処分事業の実施者に対して、「監視付き長期地層処分」概念の具体化を要求すべきである。
  • 廃棄物管理が発電事業者から財政的に独立して行われるようにすべきである。
  • オパリナス粘土は、監視付き長期地層処分にも適している。
  • 国際共同処分は、スイス自身で処分の問題を解決するための選択肢とはならない。
  • 処分プロジェクトのスケジュールを設定し、定期的にチェックすべきである。

スイスでは、原子力分野における規制が、数多くの法令に分散していたことなどを理由として、原子力分野の法制度の刷新の必要性が認識されていました。1998年に連邦評議会は「エネルギー対話」ワーキンググループを設置し、新しい原子力法の制定に向けた検討を開始しました。このワーキンググループには、関係官庁やNAGRAに加えて、原子力発電事業者や環境団体も参加し、原子力発電の継続や再処理の実施についての議論が行われました。同ワーキンググループは、放射性廃棄物管理の問題に関して、廃棄物の回収可能性に関する検討を継続することを勧告しました。その後、連邦の環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、1999年に「放射性廃棄物の処分概念に関する専門家グループ」(EKRA)を設置し、技術と社会の両面から問題を検討・勧告するよう依頼しました。EKRAは2000年に最終報告書をまとめ、「監視付き長期地層処分」という概念を提案し、この概念で放射性廃棄物を処分することを法律で明確化するよう勧告しました[3]。

EKRAは、従来の地層処分(GEL)― 保守を行なわず、回収の意志を持たずに、放射性廃棄物を生物圏から永久に隔離―する概念のほか、無期限の地層貯蔵(TDL)といった概念を比較検討しました。TDLは長期の安全評価に合致しないと結論付けた上で、GELにモニタリングの概念をを積極的に組み込んだ「監視付き長期地層処分」概念(KGL)を考案しました。

[4] 処分の実現可能性実証プロジェクト
スイスでは、法律等によって、国内における放射性廃棄物の処分の実現可能性の実証が求められていました。NAGRAは、結晶質岩と堆積岩に関する調査・研究を行った後、2002年12月にチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土を対象とする「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を公表しました。処分の実現可能性が実証されたことは、2006年6月に連邦評議会によって承認されています。ただし、今後の調査の対象をチュルヒャー・ヴァインラント(チューリッヒ州北東部)のオパリナス粘土に絞るというNAGRAの要求は退けました。

EKRAの勧告を受け、処分実施主体であるNAGRAもKGL概念に基づく処分場システムの検討と安全評価を実施しました。2002年に取りまとめた「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書において、KGL概念に基づいた高レベル放射性廃棄物の地層処分により長期安全性が確保できる見通しを明らかにしました[4]。

その後、連邦評議会は、全ての放射性廃棄物を「監視付き長期地層処分」概念で処分する方針を立法化するために、原子力法制の改正準備を進めました。新たな原子力法が2003 年に制定され、2005年の同法の施行に合わせて、新たな原子力令を制定し、「監視付き長期地層処分」の方針が法律で明確化されました。

スイスにおける処分の実現可能性実証の経緯
スイスにおける処分の実現可能性実証の経緯





〔参考資料〕

スイスの原子力発電利用状況

電源別発電電力量の変遷

[No canvas support]

電力需給バランス

2015年 スイス 単位: 億kWh (=0.01 x GWh)
総発電電力量 (Total Production) 677.20
- 輸入 (Imports) 340.33
- 輸出 (Exports) -350.63
国内供給電力量 (Domestic Supply) 666.85
国内電力消費量 (Final Consumption) 582.39

source: «Energy Statistics 2017, IEA» Switzerland 2015:Electricity and Heat

原子力発電の利用・導入状況

  • 稼働中の原子炉数 5基, 333.3万kW(2018年1月)

source: World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements (WNA, 世界原子力協会)


原子力関連施設

スイスの主要な原子力関連施設の立地点





全体構成
スイス
hlw/ch/prologue.txt · 最終更新: 2018/05/02 11:40 (外部編集)

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