目次

HLW:SE:chap4

スウェーデン スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物処分

スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)

目次


4. 処分地選定の進め方と地域振興

4.1 処分地の選定手続き・経緯

ポイント

  • スウェーデンにおけるサイト選定は、実施主体であるSKB社が提案した4種類の調査から構成されています。サイト選定の手続は法令に定められてはいませんが、3年ごとの研究開発計画(SKB社による呼称はRD&Dプログラム)のレビューを通じて、政府と規制機関による承認を得て進められています。SKB社は、次の段階へ進む際に地元自治体の了承を得ています。処分場の建設(詳細特性調査を含む)には、原子力活動法に基づく許可と環境法典に基づく許可が必要であり、申請書には環境影響評価書を添付することが義務づけられています。
  • SKB社は、2009年6月に処分場建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定しました。その後、2011年3月に処分場の立地・建設の許可申請を行いました。

処分地選定の進め方

処分場のサイト選定の流れ
処分場のサイト選定の流れ

スウェーデンでは、処分場のサイト選定方法は法令では規定されていません。しかし、原子力活動法に基づいて、実施主体のスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が3年ごと研究開発計画(RD&Dプログラム)を作成し、これを規制機関等がレビューし、最終的に政府が承認する手続きを通じて、サイト選定に対する間接的な規制が行われています。

SKB社は、1992年に取りまとめた研究開発計画において、サイト選定に関し、右の図のように総合立地調査、フィージビリティ調査、サイト調査、詳細特性調査という4種類の調査を設定し、2段階で選定が進められる構成としています。こうしたSKB社が計画した選定方法について、政府は、第1段階の調査は5~10の自治体で、第2段階の調査は少なくとも2か所で実施するという条件を設定しました。なお、詳細特性調査は処分場の建設段階に含まれており、建設許可が出された後に実施されます。




県域別総合立地調査の成果例
(出典:環境影響報告書2011、SKB 社)

総合立地調査

サイト選定プロセスを構成する4種類の調査の一つである総合立地調査は、地層処分場の立地方法論に関する文献ベースの研究です。特定の自治体を対象としたものではなく、自治体を対象に行うフィージビリティ調査と並行して実施されました。例えば、全国各地での立地見通しを示すために、1998~ 99年にかけてSKB 社は県域別(国の出先機関が置かれている行政区分)に地質分布や土地利用状況等の既存情報を取りまとめました。


自治体のフィージビリティ調査受け入れ

表1 フィージビリティ調査受け入れ自治体での議決状況
フィージビリティ調査受け入れ自治体での議決状況

自治体を対象に行うフィージビリティ調査では、その実施に際してSKB社が全国の自治体に公募または申し入れを行い、自治体議会で調査を受け入れることを条件としました。この調査は、わが国の文献調査に相当し、既存の地質関連文献のほか、土地利用状況や環境、雇用面の影響を調査するものです。右の表1は、フィージビリティ調査が実施された自治体での議会での受け入れの議決結果を示します。

フィージビリティ調査の初期では、公募に応じたストールウーマンとマーロアの2つの自治体で1993年から調査が行われましたが、いずれの自治体でも住民投票が行われ、反対多数という結果になりました。SKB社はこの結果を尊重し、これらの自治体での調査活動から撤退しました。

その後、SKB社は1995年から、原子力施設近隣の自治体にフィージビリティ調査実施の申し入れを行いました。そのうち、自治体議会の承認が得られたエストハンマル、ニーシェーピン、オスカーシャム、ティーエルプ、フルツフレッド、エルブカーレビーの6自治体でSKB社が調査を実施しました。


自治体のサイト調査受け入れ

表2 サイト調査受け入れに関する地元議会での議決
サイト調査受け入れに関する地元議会での議決

処分場のサイト選定の経緯
処分場のサイト選定の経緯

サイト調査の候補地は、1995年以降フィージビリティ調査が実施された6自治体での調査結果からSKB社が選定し、2000年11月にオスカーシャム、エストハンマル、ティーエルプの自治体に位置する3カ所を候補地としました。この選定結果は、SKB社が研究開発計画書の補足書という形式で取りまとめ、3年ごとに行われる研究開発計画の審査手続きと同様に、規制機関などによる審査が行われました。政府は、2001年11月にSKB社のサイト調査候補地の選定結果を承認しました。

その後、3つの自治体で、SKB社による調査の継続、すなわちサイト調査の受け入れが審議されました。前頁の表2に示すように、エストハンマルとオスカーシャムは、サイト調査の受け入れを決めましたが、ティーエルプは調査を打ち切ることにしました。この結果を受けて、SKB社はエストハンマルとオスカーシャム自治体において、地表からのボーリングを含むサイト調査を2002年から開始しました。サイト調査には2007年までの約5年間を要し、その結果から、2009年6月にSKB社は、処分場の建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定しました。


建設地決定に係わる法制度

SKB社は2011年3月に、フォルスマルクに処分場を立地・建設する許可申請を行いました。この申請に対して法律に基づいた決定が行われると、スウェーデンにおいて建設地が“決定した”ことになります。

スウェーデンの法制度では、高レベル放射性廃棄物の処分場の立地・建設には、環境法典と原子力活動法という2つの法律に基づく許可が必要となっていることが特徴です。以下で説明するように、実施主体が行う申請の審理・審査の場も異なっています。

1つ目の許可は、環境法典に基づく(環境に影響を及ぼす事業に関する)許可です。この許可申請は土地・環境裁判所に提出され、審理されます。環境法典に基づく審理は、同一目的を達成するための複数の方法と場所から、最適なもの(方法と場所)が選択されているかどうかを判断するもので、このような判断を裁判形式で行うものと見ることができます。高レベル放射性廃棄物の処分場の場合には、申請案件が土地・環境裁判所で判断できる問題であるかを、政府が事前に判断することになっています。その際には、建設予定地の地元自治体議会が当該事業の受け入れを承認していることが前提となっています。これは、地元自治体が拒否権を有することを意味します。

2つ目の許可は、原子力活動法に基づく原子力施設の建設許可です。この許可申請は、放射線安全機関(SSM)に提出され、審査されます。SSMは審査意見を政府に提出し、それをもとに政府が許可を出すことになっています。

いずれの法律に基づく許可申請にも環境影響評価が求められており、地元自治体や影響を受ける個人・団体のほか、関係行政機関との協議が義務づけられています。また、上で説明したように、2つの異なる過程の審理・審査のいずれにおいても政府の判断が行われますが、矛盾を避けるために、同じ機会に行われることになっています。環境法典と原子力活動法という2つの法律に基づく審理・審査が同時進行する事例は、SKB社が2011年3月に提出した処分場の立地・建設の申請が初めてとなります。


4.2 地域振興方策

ポイント

  • スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物の処分事業に関連して、自治体が行う情報提供活動や協議に要する費用は、原子力廃棄物基金で賄われています。その協議を通じて、サイト調査が実施されたエストハンマルとオスカーシャムの2自治体、SKB社、原子力発電事業者4社の間で、地元開発に関する協力協定が2009年3月に合意されました。

制度的な財政支援

スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物の処分費用や原子力発電所の廃止措置費用を確保するために制定されている資金確保法において、自治体が行う情報提供や協議に要する費用を、原子力廃棄物基金からの交付金で賄えることが定められています。しかしこれ以外に、処分場立地に関連する自治体に対して経済的便宜供与を定める制度はありません。この交付金の使途は、使用済燃料や放射性廃棄物の問題について、自治体が行う情報提供活動の費用に限られており、他の目的に使用できません。


事業者と地元自治体間の協力協定

『安全/リスク、決定/責任』(エストハンマル自治体、2011年)『原子力問題とオスカーシャムのアイデンティティ』(オスカーシャム自治体、2006年)
自治体が地元の社会経済の発展を検討するために独自に取りまとめた報告書

  • 左:『安全/リスク、決定/責任』(エストハンマル自治体、2011年)
  • 右:『原子力問題とオスカーシャムのアイデンティティ』(オスカーシャム自治体、2006年)

オスカーシャムとエストハンマルの自治体組織とSKB社の協議を通じて、2009年3月にこれら2自治体における地元開発に関する協定が合意されました。SKB社の計画では、オスカーシャム自治体では今後も使用済燃料の集中中間貯蔵が行われるほか、それらをキャニスタに封入する施設が新たに建設されます。エストハンマル自治体には、そのキャニスタを処分する最終処分場が建設されます。SKB社は、2カ所の原子力施設を長期に継続して操業するため、地元の社会経済的な側面も重視しています。スウェーデンでは、自治体の社会経済を発展させることは、自治体の基本的な仕事と位置付けられています。こうした認識と双方の立場を尊重して、SKB社・原子力発電事業者4社と2自治体間で協力の枠組みが生み出されています。

この開発協力協定では、新規の原子力施設立地による自治体への直接的な経済効果とは別に、追加的な自治体開発支援を原子力発電事業者とSKB社が行うことになっています。2025年までの期間で、総額20億スウェーデン・クローネ(300億円)規模の経済効果を生み出す付加価値事業を実施する予定であり、その経済効果がエストハンマル自治体で25%、オスカーシャム自治体で75%の割合で創出されることになっています。なお、地元開発に関する協力協定はSKB社が地層処分場のサイトを決める前に合意されており、2自治体間の経済効果の割合は「地層処分場が立地されない自治体に75%」という内容で合意されたものでした。

付加価値事業では、以下の分野で投資が行われることになっています。


※エストハンマル自治体の概観

 SKB社が最終処分場の建設予定地としたフォルスマルクはエストハンマル自治体にあり、スウェーデンの首都ストックホルムから北に約120キロメートルの所です。フィンランドとの間にあるボスニア湾の南端部に面しており、沖合にはアーキペラルゴと呼ばれる群島が数多く広がっています。このような景観から、エストハンマルは避暑地や観光地として有名です。歴史的には、漁業/船舶業、鉄工業及び農業が盛んな地域です。今日では、サンドビック・コロマント社とフォルスマルク発電会社の2つの企業が中心です。

  • 面積:約2,790 平方キロ(東京都の約1.3倍)
  • 人口:約21,400人(2014年末)

※オスカーシャム自治体の概観

 使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)が1985年から操業しています。この施設は、シンペバルプ半島に立地しており、ストックホルムから南に約300キロメートルの所にあります。SKB社は新たに使用済燃料をキャニスタに封入する施設を建設し、一体的に運用する計画です。
 港に面したオスカーシャムの市街地は工業の町です。以前は造船業が盛んでしたが、近年はエネルギー産業が盛んで、オスカーシャム原子力発電所のほか、エネルギー関連企業も多く集まっています。市街から約35キロメートル北には、SKB社のエスポ岩盤研究所もあります。

  • 面積:約1,054 平方キロ(東京都の約0.5倍)
  • 人口:約26,270人(2014年11月)





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